男子形決勝で演武する喜友名諒(c)朝日新聞社
男子形決勝で演武する喜友名諒(c)朝日新聞社
金メダルを披露する喜友名諒(c)朝日新聞社
金メダルを披露する喜友名諒(c)朝日新聞社

 8月8日に最終日を迎えた東京五輪の閉会式で、空手男子形の金メダリスト、喜友名(きゆな)諒(31)が日本選手団の旗手を務める。琉球王国時代の護身術、琉球古武道がルーツと言われる発祥地・沖縄に生まれ、沖縄空手の神髄を体現する者として、大役を担う。

【写真】まるで「居酒屋のユニホーム」?酷評された東京五輪表彰式の衣装はこちら

*  *  *

 1990年、沖縄県沖縄市に生まれた。5歳のときに空手と出合い、2004年に全国中学生選手権個人形を制覇。翌年に劉衛流(りゅうえいりゅう)の門をたたいた。04年、劉衛流の師範・佐久本嗣男さん(73)=現日本代表形監督=のもとで稽古に励んでいた豊見城あずさ、嘉手納由絵、清水由佳の3選手が世界選手権の女子団体形を制していた。

「僕も世界一になりたいです」

 喜友名が言うと、佐久本さんは尋ねた。

「365日休まず稽古できるか」

「はい」

 喜友名はそう答えたという。

 約束どおり、休まずに稽古を重ねてきた。沖縄国際大学4年の12年に全日本選手権を制し、それ以来9連覇している。2年に1度行われる世界選手権も3連覇中だ。

 空手にはさまざまな流派があり、沖縄空手では「小林流」「剛柔流」「上地流」が三大流派とされる。「劉衛流」は、戦後まで一子相伝、門外不出を貫いてきたこともあり、小さな流派だ。

 佐久本さんは4代目の仲井間憲孝氏に弟子入りを許され、1980年代に世界選手権を3連覇した。指導者としても女子団体形や喜友名、男子団体形で世界チャンピオンを次々と生み出し、劉衛流の名が世界に知られるようになった。

 劉衛流は攻防一体のスタイルで、一歩進むうちに二つの技を出す「一足二挙」の間合いで一気に相手にたたみかける。

 喜友名は6日、1次リーグから決勝までの四つの演武で、すべて劉衛流の代表的な形を選んだ。1次リーグの2試合は「オーハン」と「アーナン」。準決勝は「アーナンダイ」、そして決勝は「オーハンダイ」だ。四つの演武すべてで、ただ一人の28点台(30点満点)の高得点をたたき出した。

次のページ
次のパリ五輪では実施されない