不動産投資の最大リスクは空室の発生だ。都心の人気エリアなら今後も人口流入が続く見込みで、安定的な賃貸需要を期待できそうだ (c)朝日新聞社
不動産投資の最大リスクは空室の発生だ。都心の人気エリアなら今後も人口流入が続く見込みで、安定的な賃貸需要を期待できそうだ (c)朝日新聞社
AERA 2021年8月9日号より
AERA 2021年8月9日号より

 資産家の間で秘かに広まっている金融商品がある。不動産小口化商品といい、相続税の節税や生前贈与に役立つという。その仕組みは、どんなものか。AERA 2021年8月9日号から。

【図】不動産小口化商品の仕組みはこちら

*  *  *

 家賃という副収入を期待できることから、資産家のみならず一般的な給与所得者の間でも、賃貸マンションや賃貸アパートへの投資が根強い人気だ。

 しかし、ワンルーム1室だけを持っていても、空室が出た途端に収入が途絶えてしまう。複数の物件や、1棟丸ごと所有すれば、すべて空きにならない限り、そういった事態には陥らない。だが、そのためにはかなりの資金が必要となる。ふつうの会社員ではなかなか手が出ない。

■少額からの投資が魅力

 不動産投資に興味があっても大金は出せないし、あまりリスクも取りたくない。そういった人に人気を集めているのが「不動産小口化商品」。大まかに説明すると、複数の投資家から資金を集めて賃貸物件に投資し、得られた家賃収入を出資額に応じて分配する仕組みだ。ネーミングからも想像がつくように、少額からの不動産投資を可能としたものだ。

 比較的少ない資金から不動産投資ができるといえば、REIT(リート=不動産投資信託)を連想する読者もいるだろう。こちらも、投資先の不動産から賃料を得て、投資家に分配する仕組みだ。証券取引所に上場している商品もあり、株式のような感覚で売買ができる。

 だが、不動産小口化商品にはREITと根本的に異なっているポイントがある。それは、税制上の解釈によって、結果的に相続税や贈与税の負担を軽減できることだ。

 不動産小口化商品は大きく二つのタイプ(任意組合型・匿名組合型)がある。

「任意組合型」は、複数の投資家と事業者(不動産会社)が団体(任意組合)を結成し、共同出資で賃貸不動産に投資する仕組み。実際の運用は事業者に任せるが、投資家も物件の共有持ち分を取得しているため、不動産と同じ税制が適用される。

「匿名組合型」は事業者が不動産を所有し、投資家はその運用益を受け取る。登記簿に投資家の名前が載らないので、「匿名」という。5万~100万円から始められる商品もある。

著者プロフィールを見る
大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

大西洋平の記事一覧はこちら
次のページ