東京五輪の開会式をはじめ、ほとんどの会場では無観客で競技が行われている/7月23日、国立競技場で (c)朝日新聞社
東京五輪の開会式をはじめ、ほとんどの会場では無観客で競技が行われている/7月23日、国立競技場で (c)朝日新聞社
AERA 2021年8月9日号より
AERA 2021年8月9日号より

 東京五輪が開幕し、日本人選手の活躍で列島が金メダルラッシュに沸く。だが開催経費は膨らみ続け、私たちの負担は確実に大きくなる。AERA 2021年8月9日号から。

【図】五輪の経費は3兆円を超す?

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「世界一コンパクト」を目指したはずの東京五輪・パラリンピック。新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期されたうえに、無観客での開催となった。開会式を巡って直前まで混乱が続いたが、大会が始まれば、柔道やスケートボードを中心に日本人選手の活躍はめざましく、日本中が金メダルラッシュに沸いている。

 だが、開催にかかる経費は、準備期間を含めると五輪史上最大級ともいわれる3兆円規模にまで膨らむ見通し。国民や東京都民への負担が重くのしかかることになりそうだ。苦肉の策の無観客での開催が、様々な「マイナス効果」を生むという。

■無観客で“経済効果減”

 7月27日の女子ソフトボール決勝。日本が米国を破り、2008年の北京五輪以来13年ぶりの2連覇を達成した。“鉄腕”上野由岐子投手が最後の打者をキャッチャーフライに打ち取った瞬間、テレビの最高視聴率は46.0%に達した。しかし、会場となった横浜スタジアムは、本来なら満員の観客から惜しみない拍手や応援の大歓声が送られるはずだっただけに、やはり寂しい印象を残した。

 海外からの観客は3月に受け入れないと決まったものの、国内はぎりぎりまで有観客が模索された。だが感染拡大が収まらず、最終的に1都3県の会場で無観客開催が決まったのは、開幕を約2週間後に控えた7月8日だった。NHKの報道によると、2県が昼間に観客を入れることを主張したが、最終的には都に合わせる形で1都3県の無観客が決まったという。

 無観客での開催は、選手の士気の低下の懸念といった競技面でのマイナスはもちろん、経済面での損失も少なくない。

 大会組織委員会の武藤敏郎事務総長はNHKの番組で、900億円と見込んでいるチケット収入が期待できなくなることについて、「ゼロではないが何十億円程度に激減するのは間違いない」と述べた。また、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、無観客で約1470億円の経済損失が見込まれると試算している。

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