もはや「選挙の顔」として期待されなくなった菅義偉首相。9月の自民党総裁選を前に総選挙に踏み切れるのか/7月5日、首相官邸で (c)朝日新聞社
もはや「選挙の顔」として期待されなくなった菅義偉首相。9月の自民党総裁選を前に総選挙に踏み切れるのか/7月5日、首相官邸で (c)朝日新聞社
立憲民主党の枝野幸男代表。都議選では批判票の受け皿として一定の役目を果たしたが、総選挙まで勢いが続くか/5月31日、国会内で (c)朝日新聞社
立憲民主党の枝野幸男代表。都議選では批判票の受け皿として一定の役目を果たしたが、総選挙まで勢いが続くか/5月31日、国会内で (c)朝日新聞社

 東京都議選で自民党が都議会第一党に返り咲いたが、獲得議席は伸び悩んだ。菅首相では総選挙は戦えない。そんな危機感が党内にまん延している。AERA 2021年7月19日号から。

【写真】都議選では一定の役目を果たしたが、総選挙まで勢いは続くか。注目な人といえば…

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 果たして自民党が負けすぎたのは「都民ファーストが土壇場で巻き返しを図った」からなのか。この分析は、同じ党内でも都連と国政では解釈が全く異なる。危機感を募らせるのは国政の側だ。念頭には、衆議院の解散と、総選挙の行方がある。

「深刻なのは春先の三つの補欠選挙・再選挙、そして、千葉と静岡の二つの県知事選挙。いずれも自民党が負けているということ。これは前代未聞ですよ。つまり、もう菅義偉首相では、勝てないということかもしれない。これだけ勝てないと『選挙の顔』としては失格なんです」

 そう語るのは自民党のベテラン議員。だからといって解散・総選挙の前に総裁選の実施を求める、いわば「菅降ろし」の先頭に立つ選択肢はないという。

「誰の目にも、今度の選挙は分が悪いことは明らか。それに、菅さん以外の弾がないでしょ。河野(太郎)さんはワクチンでダメ。岸田(文雄)さんは選挙で勝てない。石破(茂)さんは党内人気が極端にないから担げない。安倍晋三前首相や麻生太郎財務大臣の声もありますが、それを声高に言っているのは、安倍人気の陰で苦労せずに当選した1回生、2回生議員ですよ。今度の選挙では、菅人気は見込めない。どれだけ地元を歩いてきたのか。議員個人の底力が試される選挙になるでしょう」

 国会が閉会中の今、現職議員は地元に戻り、総選挙に向けた準備に奔走している。だが自民党議員は「コロナ対応の無策ぶり」「五輪強行」「ワクチンを巡る混乱」への批判にさらされているという。それをかわすため、街頭に出ず、企業や団体回りに徹する議員もいるそうだ。

 それでも官邸は「なんだかんだ言って五輪が開催されれば、中止に傾いていた世論も、必ず開催してよかったに戻ってくる。その上で全面的に緊急事態宣言を解除し、選挙だ」(関係者)と楽観姿勢を崩していない。

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