60代男性のスティーブさんは違う視点からも嘆く。
「北京、ロンドン、リオデジャネイロ、東京という過去の開催地と比べて都市圏人口が250万人しかいないブリスベンは規模が小さすぎます」
今回の東京のように経済的なリスクが重なれば、都市規模が小さいほど、その打撃は大きくなる可能性もある。
■コンパクト五輪目指す
ただ、ブリスベンでは五輪の分散開催を予定している。65キロ離れたゴールドコーストでビーチバレーやゴルフなど8競技、85キロ離れたサンシャインコーストでマラソンや競歩など4競技。ブリスベン会場は、ほとんどが市の中心部から5キロ以内に固める。全会場のうち新規に作られる施設は、わずか16%という「コンパクト五輪」だ。
40代の男性教師のスコットさんは言う。
「たくさんの競技者が一堂に会するオリンピックのあり方が見直される時期なのかもしれません。各地での単独競技であれば、選手や関係者、観客も限られますから、選手村やホテルを新たに作る必要はありません」
開催地のデメリットに光が当たったいま、開催地が心から歓迎できる五輪にするには、あり方を根本的に考える必要がある。(ライター・柳沢有紀夫)
※AERA 2021年6月28日号