国が全都道府県にデルタ株の有無を調べるよう要請したのは6月4日になってからだ。それまでは東京都など一部の自治体が自主的に調べていただけで、その他の自治体のスクリーニング検査方法では、デルタ株は見つけられなかった。

 東京都は17日、健康安全研究センターで独自に実施している変異株スクリーニング結果を基に、6月7日からの1週間に発生した感染のほぼ4分の1はデルタ株だった可能性がある、という推計結果を発表した。

 今後、国内でもデルタ株への置き換わりが進む可能性は高い。アルファ株は、国立感染症研究所(感染研)の分析や海外の研究チームの複数の論文によると、従来株より1.3~1.7倍感染が広がりやすいとみられている。デルタ株は、PHEの疫学調査などによると、アルファ株に比べて増殖率が高く、アルファ株よりさらに約1.6倍、感染が広がりやすいという。

■入院リスク2.6倍

 入院率や死亡率が上がるなど、重篤度については、その時点での医療体制の逼迫度など環境要因も関係するので評価が難しい。世界保健機関(WHO)はどの変異株についても、重症化させやすさを示す「病原性」が上がっているのか、科学的な確証は得られていないとする。その上で、従来株よりアルファ株は入院・重症化・死亡率の高い可能性があり、デルタ株は入院率が高い可能性があるという。

 PHEが3月29日~5月20日にウイルスの遺伝子解析をした感染者約3万9千人を分析したところ、デルタ株への感染者はアルファ株感染者に比べ、検査を受けてから2週間以内に入院するリスクが2.6倍高かった。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年6月28日号より抜粋