では、ブルーライトカット眼鏡の大人への影響はどうか? 前出の加藤医師はこう話す。

「大人になると、成長期のようには近視が進みません。ただ、アメリカの権威ある団体から、ブルーライトカット眼鏡に眼精疲労を防ぐ効果は全くないと報告されています。すでに使用していて調子がいいのなら継続して構いませんが、眼精疲労の軽減が目的なら、ほかにもっと重要なことがあります」

■治療が必要なケースも

 加藤医師が院長を務める眼科医院には、裸眼で生活できるがパソコン操作で目が疲れるからブルーライトカット眼鏡を買ったものの、余計に調子が悪いという患者が来たそうだ。度数を確認すると、遠くがよく見えるように合わせられていた。

「眼鏡の度数はTPOによって変わります。パソコン操作なら1メートル先が見えれば十分ですが、車の運転はもっと遠くが見える必要がある。眼鏡を作る時は用途をよく説明しないと、遠くを見る度数になりがちです」

 また、眼精疲労の本当の原因を突き止めることも重要だ。

「目が乾くとか、ショボショボするとかは実はドライアイのことがあります。目がかゆい、目やにも出るというのは結膜炎かもしれません。眼精疲労ではなく、治療が必要な疾患だったケースはけっこうあります」

 テレワークの普及で目を酷使するようになった今、ブルーライトさえカットすれば大丈夫、ではないのだ。(ライター・越膳綾子)

AERA 2021年5月17日号