2019年6月の大規模デモでは、香港政府への抗議に200万人の市民が参加。その多くが若者だった (c)朝日新聞社
2019年6月の大規模デモでは、香港政府への抗議に200万人の市民が参加。その多くが若者だった (c)朝日新聞社
AERA 2021年5月3日-5月10日合併号より
AERA 2021年5月3日-5月10日合併号より

 香港政府や中国共産党を批判し続けてきた蘋果(ひんか)日報(リンゴ日報)の創業者・黎智英(ジミー・ライ)氏が実刑判決を受けた。民主化活動をしてきた香港人にとって大きな衝撃となっており、その影響は大きい。中には海外に脱出し、移住先で活動を続けようとする香港人もいるが、それも容易ではないようだ。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号で、彼らが直面している現状を取り上げた。

【図】香港民主派の自由が次々と奪われている

*  *  *

 自由を奪われ中国政府への批判ができない暮らしに耐えられないという人たちもいる。

 その多くは英国やカナダ、台湾、日本への脱出を希望している。日本以外は移住を望む香港人を支援するためのさまざまな優遇制度を整え、優秀な人材を歓迎する姿勢をみせている。

 ただ、誰もが容易に移住できるわけではない。ある程度の資金が必要で、移住先で安定した収入を得るためには専門的な技術や知識もいる。この1年間で30万以上の人が香港脱出を図ると思われたが、実際に移住した人は10万程度にとどまる。

 それでも、海外で自由を得た香港人たちは動き出している。

「海外在住の香港人は団結して中国政府への反抗を継続しよう」と呼びかける≪2021 香港約章≫が3月、民主派リーダー8人の連名で発表された。

 中心人物の一人、羅冠聡(ネイサン・ロー)氏は、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や周庭(アグネス・チョウ)氏が所属していた政党・香港衆志(デモシスト)の元党首で、香港立法会議員も務めた。現在、香港警察に香港国家安全維持法(国安法)違反容疑で指名手配され、英国に亡命中だ。

 海外でこうした動きが起こるのは当然のことだが、どれだけ強力な「戦線」を構築できるかはわからない。神奈川県内の会社で働きながら、秘密裏に香港の民主化運動を支援している30代の女性はこう語る。

「約章に反対はしませんが、履行は難しいと考えています。海外に出た人は、たいてい困窮しています。コロナ禍もあり、外国でお金を稼ぐのはかなり厳しい。他人のサポートがないと香港で行っていたような社会運動を続けるのは難しいのです」

 中国政府への警戒感も強い。

次のページ