那覇市議会の意見書の文面から浮かび上がるのは、市民感情への配慮だ。

「沖縄戦の戦没者の遺骨がむげに扱われないように、というところにフォーカスした内容です。沖縄では沖縄戦の重みは政治の左右を問わず無視できません。とりわけ7月の市議選を控え、市民感情には敏感にならざるを得ません」(保守系市議)

 那覇市議たちには、沖縄戦の慰霊ムードが濃くなる6月23日の「慰霊の日」直後の市議選が念頭にあるのは間違いない。那覇市議会の意見書はこう結ばれている。

<本市議会は「慰霊の日」を前に、遺族と市民、県民の心情に寄り添い、政府に対して、下記のとおり強く求める>

 本島南部の土砂採取をめぐっては、糸満市内の土砂を採掘しようとする業者が自然公園法に基づいて県に開発を届け出ており、県が期限の4月16日までに採掘禁止などの措置命令を出すかどうかに注目が集まっている。保守系市議はこう本音を漏らす。

「本来は県が判断すれば済む話。知事を後押しするような政治的な動きに巻き込まれたくないという判断も働き、意見書を否決した市議会もあります。私個人としては過去の開発との整合を問いたい気持ちもありますが、純粋な県民感情として、どの基地にも、どの埋め立てにも遺骨を含む土砂は使っちゃダメという感覚があるのは否定できません」

 具志堅さんは4月21日に上京し、国に対して本島南部から土砂を採取する計画の断念を求める予定だ。具志堅さんは言う。

「一番の課題は、国が南部の土砂の需要をつくりだしていることです。需要がなくなれば、土砂を供給する業者も開発申請するメリットがなくなります」

(編集部・渡辺豪)

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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