那覇市の県庁前で、沖縄本島南部での土砂採取「断念」を政府に求め、ハンガーストライキに臨んでいた具志堅隆松さん/3月1日(c)朝日新聞社
那覇市の県庁前で、沖縄本島南部での土砂採取「断念」を政府に求め、ハンガーストライキに臨んでいた具志堅隆松さん/3月1日(c)朝日新聞社
6日の昼下がり。市民有志が東京・渋谷のハチ公像の前に集まって、具志堅隆松さんのメッセージをつないだ(撮影/渡辺豪)
6日の昼下がり。市民有志が東京・渋谷のハチ公像の前に集まって、具志堅隆松さんのメッセージをつないだ(撮影/渡辺豪)

 辺野古新基地建設の埋め立てに、沖縄戦の遺骨が多く残る本島南部の土砂を使用する国の計画に対し、沖縄では自民を含む各党相乗りで拒絶する動きが広まっている。

【写真】具志堅さんへのメッセージは渋谷・ハチ公前からも送られていた

 3月26日時点で県内12の市町村議会が、遺骨を含む可能性のある土砂を埋め立てに使わないよう国に求める意見書を可決。県議会は文案調整に至らず、30日の定例議会最終日の提案を見送ったものの、臨時議会で全会一致の可決を目指す方針だ。

 辺野古新基地建設への賛否とは別に、本島南部から土砂を採取しないよう国に求める流れはなぜおきたのか。転機は二つある。

 一つは、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん(67)らが沖縄県庁前で3月1日から6日まで実施したハンガーストライキだ。あくまで「人道上の問題」として政治的立場を超えて南部の土砂採取断念を求めた具志堅さんの訴えは多くの県民の共感を得た。

 もう一つは、自民党沖縄県連の中川京貴会長と公明党沖縄県本部の金城勉代表が沖縄防衛局に出向き、県民感情に深く配慮するよう要請したことだ。

 3月10日に提出された自民県連と公明県本部の連名の申し入れ書には「 先の大戦の激戦地であった本島南部地区の遺骨混入の土砂を辺野古基地建設の埋め立て土砂として使用することは県民として耐えがたい。その県民感情に深く配慮すること」と記されている。

 要請後の取材に対し、自民県連の中川会長は「本島南部地域では今も遺骨収集が行われている。そこで土砂を運ぶことは常識的にも無理があり、県民の理解を得られない」と述べた。公明県本部の金城代表は、本島南部は先の大戦で多くの犠牲を払った地域だとして「遺骨のあるなしにかかわらず、県民の思いや感情に寄り添ってほしい」と話した(「沖縄タイムス」)。

「沖縄戦」に敏感な支持者が多い公明が主導したとの見方もある、この申し入れを歓迎するのは具志堅さんだ。

「戦没者とご遺族への配慮とともに、県民に寄り添う政治にふさわしい行動と捉えています。とりわけ公明は、遺骨があるなしにかかわらず本島南部から土砂を採取すべきではない、と踏み込んでくれた。これこそが沖縄の心。心強いです」

 一方、地元の記者はこう指摘する。

「地元業者から突き上げられた本島南部の県議らから、『県連内でもっと議論してから防衛局へ行くべきだった』との批判も上がっていましたが、自民党県連としては県内世論に押されたというのが本音のようです」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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