感染症法や動物殺傷、大麻使用──社会は厳罰化に進むが、はたして効果的なのか。厳しいルールが敷かれることで「萎縮につながる」との声もある。背景には何があるのか。AERA 2021年4月5日号から。
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3月24日。兵庫県明石市議会の定例会最終日で「明石市新型コロナウイルス感染症の患者等に対する支援及び差別禁止に関する条例」の制定案が可決された。5条5項にこうある。
「感染症法第80条又は第81条の規定にかかわらず、これらの条に規定する行為を行った市民の事情等に配慮し、寄り添いながら支援を実施する」
2月3日に成立した改正感染症法では、感染者が入院を拒否したり入院先から逃げたりすると50万円以下の過料が科せられるようになった(80条)ほか、濃厚接触者を特定するための保健所による疫学調査を拒否した場合も、30万円以下の過料の対象となった(81条)。
反対に、明石市条例では「寄り添いながら支援」をうたう。罰則の適用は保健所を設置する自治体の判断に委ねられるが、泉房穂(ふさほ)市長は任期中は罰則を適用しない方針。取材にこう語った。
「そもそも感染した人を罰するなど間違っている。『北風と太陽』の話ではありませんが、何でもかんでも北風を吹かせて罰則を加えても目的は達成できません。必要なのは支援です」
が、社会が向かうのは厳罰主義だ。それは刑事司法の世界にとどまらない。
■大した罪にならない
2017年8月、埼玉県の元税理士の男が動物愛護法違反で逮捕され、懲役1年10カ月執行猶予4年の地裁判決が確定した。男は動物を虐待する様子を動画に記録し、匿名のファイル共有サイトに投稿していた。
「動物環境・福祉協会Eva」の理事長を務める俳優の杉本彩さんは衝撃を受けた。
「こんな残虐なことができるのかという衝撃と、裁判の結果に対する衝撃の両方がありました。法定刑が非常に軽微であるという問題がそこにありました。まずやるべきは動物の殺傷や虐待についての厳罰化なのではないかと考えました」