写真はイメージです(gettyimages)
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 今、食品ロス問題と向き合うベンチャーの活躍が目立っている。日本社会にロス削減の意識が高まる一方で、日本の食品ロス量は世界6位、アジアで1位という試算もある。どうすればロス削減を加速させられるのか。AERA 2021年3月29日号から。

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 食品ロス削減ベンチャーが活躍する背景について、みずほ総合研究所アジア調査部兼政策調査部の堀千珠主任研究員は「食品ロス削減に対する社会的ニーズの高まりと、デジタル上の電子商取引の拡大が重なり、ベンチャーが参入しやすいビジネス環境が整ったため」と解説する。

 コロナ禍で余った高級食材が割安で流通したり、飲食店や生産者がピンチに陥っているのを「支援」する目的で食品を購入したりする機運も生まれた。これらは食品ロス削減に取り組むベンチャー企業にも追い風になった、と堀さんは見る。

 食品ロス削減は地球規模の課題だ。2015年に国連が提唱したSDGsで、「30年までに世界の1人当たり食料廃棄を半減させる」ことが盛り込まれた。

 日本の実情はどうか。

 農林水産省と環境省の調査によると、17年度の食品ロス量の推計値は約612万トン(事業系食品ロス約328万トン、家庭系約284万トン)。国民1人当たりにすると48キロになる。試算では世界6位、アジアで1位という不名誉な状況だ。

 国はSDGsに沿う形で「食品ロスの削減の推進に関する法律」(食品ロス削減推進法)を19年10月に施行。国内の食品ロスを30年度までに00年度比で半減させる目標を設定している。

 食のサプライチェーンは川上の生産者と川下の消費者が分離され、その間の取引が複雑でブラックボックス化されている。この解消のため、生産・流通・販売段階のデータを食品関連事業者や農水畜産業者の間で共有する「スマートフードチェーン」の構築に向けた検討も進む。

 堀さんは言う。

「こうした取り組みに多くの関連事業者が低コストでアクセスできる環境が整えば、食品ロス削減のペースが一気に加速する可能性があります。行政には食の流通の効率化に向けた情報データの基盤づくりの支援を期待したい」

(編集部・渡辺豪)

※AERA 2021年3月29日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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