3月18日、宮城県と仙台市は独自の緊急事態宣言を発出した。独自の緊急事態宣言について説明する村井嘉浩知事。(c)朝日新聞社
3月18日、宮城県と仙台市は独自の緊急事態宣言を発出した。独自の緊急事態宣言について説明する村井嘉浩知事。(c)朝日新聞社
2020年5月7日、休業要請解除直後の仙台・国分町の繁華街の様子。人通りはまばらだった。(c)朝日新聞社
2020年5月7日、休業要請解除直後の仙台・国分町の繁華街の様子。人通りはまばらだった。(c)朝日新聞社

 宮城県で、新型コロナウイルスの感染者が急増している。3月20日に確認された新規感染者は過去最多の125人。人口あたりの感染者数は東京の倍以上で、全国ワーストだった。また、21日にも過去2番目となる112人の感染が確認されている。

【写真】昨年の休業要請解除後の仙台・繁華街

■独自の緊急事態宣言を発出

 宮城県内で新たに確認される感染者数は、2月中は1日あたり20人未満で推移していたが、3月に入って急増した。3月11日に50人、3月17日には107人が確認され、翌18日に県と仙台市による独自の緊急事態宣言が発出された。

 ただ、対策には限界も見え隠れする。村井嘉浩知事は19日、緊急事態宣言の実効性について問われ、「我々行政ができることは限界がある。皆さまの行動の自粛をより強くお願いするしかない」と発言した。

 元国立感染症研究所主任研究官で厚生労働省クラスター対策班メンバーでもある東北大学大学院の小坂健教授は、現在の県内の感染状況について、こう危機感をあらわにする。

「これまでは、県内で人数が増えていても大規模なクラスターが発生しているなど経路を追いやすかった。一方、今は仙台市内を中心にあらゆる場所で感染者が見つかっています。『ここを抑えればいい』という状況ではなく、抑え込みはかなり難しくなっています」

■プレミアム付き食事券は93万冊

 感染急拡大の要因としてまず指摘されたのが、「Go To イート」だ。宮城県では、去年12月28日から一時停止していたプレミアム付き食事券の販売を、2月23日に再開していた。

 1冊4000円で5000円分の食事券が購入できる内容で、一時停止前に販売していた分も含め、3月9日の段階で93万冊が売れたという。

 だが、販売を再開した直後から感染者が急増し、県は3月16日から当面の間、販売を再度停止した。村井知事は15日の定例会見でこのことを問われ、「再開してから、また感染者が増えてきているというのは事実」「Go To イートと感染拡大の関係がないとは言えない」と認めている。

 3.11で集まった取材陣の影響を指摘する声も大きい。東日本大震災から10年を迎えた3月11日前後には、全国各地から取材陣が被災地入りした。そして、その多くが仙台市を経由する。記者自身もそのひとりだ。出張前は在宅勤務を徹底し、出発前日と到着翌日、さらに帰京後にも抗原検査を受けているが、ウイルスを持ち込んでしまった可能性はゼロとは言い切れない。

 石巻市に住む50代の男性はこう話す。

「今年の3.11は、取材陣の数が例年と比べ物にならないほど多かった。新型コロナが増えたのはそれが原因ではないかと思っています」

■要因は「複合的」

 前出の小坂教授は感染急拡大ついて、Go To イート再開も3.11も要因のひとつとしつつ、こう指摘する。

「感染拡大の要因は複合的だと思います。飲食店の時短営業終了やGo To イート再開で人出が増え、そこに県外からのウイルスが持ち込まれることで徐々に広まったと考えています」

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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