ホラー漫画家・伊藤潤二は「怖がり」/心霊写真やテレビの心霊番組が苦手な理由は? <現代の肖像> (1/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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ホラー漫画家・伊藤潤二は「怖がり」/心霊写真やテレビの心霊番組が苦手な理由は? <現代の肖像>

中村千晶AERA#現代の肖像
この作業机から数々の恐怖が生まれた。歯科技工士時代の工具で、画具をカスタマイズすることも(撮影/東川哲也)

この作業机から数々の恐怖が生まれた。歯科技工士時代の工具で、画具をカスタマイズすることも(撮影/東川哲也)

ロフト付きベッドの下が作業スペース。画具を吊り下げるフックなどさまざまな工夫がしてある。後ろの棚には画集やDVDがびっしり。ネジや乾電池など備品は引き出しにキッチリ整頓されている(撮影/東川哲也)

ロフト付きベッドの下が作業スペース。画具を吊り下げるフックなどさまざまな工夫がしてある。後ろの棚には画集やDVDがびっしり。ネジや乾電池など備品は引き出しにキッチリ整頓されている(撮影/東川哲也)

 ホラー漫画家、伊藤潤二。『富江』『うずまき』などの代表作を持ち、2019年にはアイズナー賞を受賞。世界中に伊藤潤二のホラー漫画ファンがいる。ゾクゾクする感覚がおもしろくて、ホラー漫画にハマった。ホラー漫画以外は描こうと思ったこともない。じわじわと、まるで肌にまで侵食していくような恐ろしさ。一筆一筆、ときに一コマ9時間かけて恐怖を描く。

【写真を見る】ロフト付きベッドの下が作業スペース

*  *  *
その日、東京・築地の朝日新聞社の地下スタジオで、世にも恐ろしい収録が行われていた。伊藤潤二(いとうじゅんじ)(57)の名作『路地裏』を、恐怖の語り部として名高いタレント・稲川淳二(73)が朗読している。

 誰も入れないはずの閉ざされた路地裏。けれどもなぜかそこからは夜な夜な子どものはしゃぐ声が聞こえてくる。その謎を確かめようと入り込んだ青年・石田は、恐ろしい秘密を知る。そしてすべてが明かされたと思ったそのとき……。

「……ようやくお前の番だ!」

 稲川が突如、大声で一撃を放った。瞬間、収録を見守る全員と同様、伊藤の体が「ビクッ」と動いたように見えた。いや、錯覚かもしれない──。

 ホラー漫画界の鬼才・伊藤潤二。その作品は緻密でおぞましく、ゾッとするほど美しい。
 怖いのは苦手、という方もいらっしゃるだろう。だが、ぜひ読んでみてほしい。その怖さは読んだ瞬間よりもじわじわと後からやってきて、一度ハマればクセになる。何度殺されても蘇る美少女を描く代表作『富江』、ストーカーの恐怖と臭いや汚物への生理的嫌悪を絶妙に盛り込んだ『うめく排水管』などなど、34年のキャリアで伊藤が生み出した作品は200タイトルに迫る。いずれも奇想天外な発想と圧倒的な画力、衝撃の展開で見る人をその世界に引きずり込んできた。

 愛猫に振り回される自身を描いた『伊藤潤二の猫日記 よん&むー』などホラーと笑いを絶妙にミックスさせた作品や、心霊を伊藤流に解釈した『緩やかな別れ』といった得も言われぬ余韻を残す作品も多い。


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