家事は、シャンプーの詰め替えや、トイレットペーパーなど消耗品の在庫確認など、気づいた人が気づいたときにやることが多く、どうしても家庭内の滞在時間が長く、目配り気配りができる女性のほうに負担が偏ってしまう。永井さんは言う。

「女性のほうが比較的察するのがうまいのは、小さいころから家庭の中で『女の子らしく』と育てられ、女子の社会で過ごす中でジェンダー化されたものです。周りの空気を読み、共感性や協調性を高めてきました」

 一方、男性はどうか。長年「暴力と男性性」の問題を研究してきた中村正・立命館大学教授によると、男性は幼いころから男性同士の中で競争を強いられ、序列や優劣の意識が強く、察することが苦手だという。

 妻が家事の分担について話し合おうとすると、夫が黙り込んで不機嫌な態度を取ったり、収入の格差などを理由に妻を侮辱したりして、話し合いにならないという家庭もある。こうした態度の土台には、女性蔑視やメンツへのこだわりなど「男らしさ」の問題が根底にあるという。

■7対3の意識で平等に

 日頃から不平等を感じ不利益を被っている女性は、男性以上に平等への意識が強い。一方でジェンダーの不平等で利益を受ける男性の多くは、そもそも不平等が存在することに気づいていないことが多い。

「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)は誰しもが持っていますが、特に男性は、下駄を履かせてもらっていることを自覚して、脱ぐ作業が必要です。家事や育児は参加や協力という言葉でもなく、半分に分け合うだけでも足りず、自分が7対3ぐらいのつもりでやってこそ、それまでの不平等が是正されるのでしょう」(中村さん)

 コロナ禍では、在宅勤務が広がるなど働き方が劇的に変化している。ニッセイ基礎研究所が20年12月に実施し、2069人から得た調査レポート「アフターコロナに、共働き世帯の家事・育児分担は変わるか」では、第1子が高校生以下の男女を分析すると、20年12月時点で、コロナ前(20年1月)と比較して家事時間が増えたと回答したのは、女性は32.3%、男性はその半分以下の12.5%。育児時間については女性の29%、男性の17.5%が増えたと回答した。もともと家事育児を多く分担している女性の負担が、コロナ禍でさらに増えているのだ。

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