この1年、すべての人の日常がコロナで一変した。リトグリも、昨年のツアーは多くの公演が延期になった。ファンに会えない状況が続く中、いかに違う方法で音楽を伝えられるかを模索した。

 歌で元気が出たと言ってもらえることをやろう──。

 メンバー全員で話しあい、気がついた。リモートであっても歌の力は変わらない、と。

 MAYUさんは言う。

「音楽の力って、どんな状況でも一番というくらいすごくエネルギーになります」

 アサヒさんも、こう話す。

「リモートだからこそみんなの声をしっかり聴きながら、私たちもその声に応えられるように歌いたい」

 歌には不思議な力がある。心の隙間を知らず知らずのうちに埋めながら、自信や勇気を与えてくれる力が。

 郡山東高校合唱部の副部長、2年生の森田絢香(あやか)さんもその力を実感した。中学の時から合唱部に所属し、郡山市内で開催される震災からの復興イベントに何度も呼ばれ歌った。すると、歌を聞いてくれた人たちが涙を浮かべた。

 歌の力って本当にすごい──。

 高校でも合唱部に入り、歌の力で少しでも多くの人を元気にしたいと思ってきた。

■元気になってくれたら

 音楽祭で郡山東高が歌う自由曲は「夜明けから日暮れまで」。福島の詩人・和合亮一氏が震災をきっかけに作詞した曲だ。被災者の鎮魂と再生への祈りを歌いながら、

<道を行け 野を行け>

 と、エールを送る。

 森田さんはこのフレーズが大好きだ。震災から10年たった今でも苦しんでいる人がいるのを見ると、まだまだ復興はできていないと感じる。音楽祭では、「そんな人たちに前に進もうという思いを届けたい」と話す。

「私たちの歌を聞いて、少しでも多くの人が元気になってくれればうれしい」(森田さん)

 あの日から10年がたち、復興は進み町もきれいになり、東北は元気を取り戻しているように見える。けれど、何年たとうとも、被災した人たちから震災の記憶が消えることはない。

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