これまでの感染予防は人との接触に注意が向きがちだったが、実は「人→モノ→人」という感染経路にも、最大限の注意を払う必要がある。特に腸から大量のウイルスが排出されている可能性があるトイレや下水が最も危険というわけだ。

 ただ、どんなに気を付けても、外出中に何も触らないのは至難の業だ。だからこそ、帰宅直後の手洗いとうがいを徹底したい。鼻粘膜のウイルスを除去するために、生理食塩水を常備して帰宅時にスポイトなどで鼻腔内を洗う「鼻洗浄」も極めて有効な対策だという。

「お茶は古くから抗菌作用が知られていますが、最新の分子科学的研究で、お茶のポリフェ
ノールがコロナウイルスのスパイクたんぱくに強く結合して感染を予防する可能性が報告されています。お茶でうがいをするのもおすすめです」(同)

 新型コロナを含むRNAウイルスは、前出のとおり低温低湿で生き延びやすく、逆に高温多湿では分解しやすい弱点を持つ。そのため、冬場に過度に換気をして、低温低湿な状態を作ることは感染防止には逆効果となる。

「室内はきちんと暖房をして、やかんや加湿器で十分な湿度を保ったほうがウイルスが分解しやすくなります」(同)

 私たちは換気が行き届いてひんやりと乾いた空気に安心を感じてしまいがちだが、カビなどと異なりRNAウイルスは暖かくもわっとした部屋のほうが苦手なのだ。(編集部・大平誠)

AERA 2021年3月1日号より抜粋