※写真はイメージ(撮影/写真部・掛祥葉子)
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 歯科矯正というと、歯に「ブラケット」という器具をつけ、ワイヤーを通して矯正する方法が一般的だが、最近ではマウスピースを使った歯科矯正も登場している。ブラケットに比べて手軽な方法に思えるが、注意も必要だという。AERA 2021年2月22日号で、日本臨床矯正歯科医会会長・稲毛滋自さんに話を聞いた。

【写真】マウスピースを使わずに歯ぎしり治療を記者が体験!

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 矯正治療の基本はブラケットだが、マウスピースを用いて歯を動かす矯正法が20年ほど前に登場した。まず患者の歯型をとり、コンピューターで矯正終了までの歯並びの変化を計算し、段階ごとのマウスピースを作製。マウスピースを1日20時間以上装着し、おおむね2週間に1度、次のマウスピースに交換し、少しずつ歯を動かしていく。

 マウスピースは透明なので、周囲から気づかれることはない。自分で着脱できるため、ブラッシングがしやすいというメリットもある。最近は費用が数万円で済むものや、マウスピース作製用の型を自分で取るセルフ矯正なども出てきている。

 しかし日本臨床矯正歯科医会の「矯正歯科何でも相談」には、「長年装着してもきちんと治らない」など、マウスピースを用いた矯正に対する相談が多数寄せられているという。会長の稲毛滋自さんはこう話す。

「マウスピースは八重歯が目立つような乱ぐい歯や著しく前歯が前突しているなど大きく動かす必要がある症例、ねじれた歯を大きく回転させたり、伸びた歯を押し込んだりする症例、骨格的なずれが大きい症例などには不向き。歯周病の状態など、歯の根元周辺の情報も不十分です」

 マウスピースは決められた時間を守って装着しなければ治療効果は期待できない。また、装着時間などをしっかり守ったとしても、目標の状態まで歯が動かないこともある。その場合はブラケットを用いた矯正などへの切り替えが必要だ。

「矯正歯科医に、向いている症例かどうかを判断してもらうことが大前提。目標の状態まで歯が動かなかった場合は、ブラケットに切り替えるなどの対応をしてもらえる歯科医を選ぶことも大切です。歯は一生使い続ける大事なツール。気づかれずに矯正できるから、安く済むからと、安易に飛びつけば、見た目も機能も失ってしまうことになりかねません。納得した上で治療を受けてください」(稲毛さん)

(ライター・谷わこ)

AERA 2021年2月22日号