完全犯罪か冤罪か 暴走する世論と“正義”の危うさを実話をもとに描く (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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完全犯罪か冤罪か 暴走する世論と“正義”の危うさを実話をもとに描く

中村千晶AERA#映画
Antoine Raimbault/1978年、フランス・パリ生まれ。映画の編集に携わりながら監督として短編映画を製作。製作した4本の短編はいずれも国内映画祭で賞を獲得。なかでも「Vos Violences」(2013年)では本作でも実名で描かれるデュポン=モレッティ弁護士本人を主演にし、10を超える賞に輝いた。本作が長編デビュー作(写真:HUGUES LAWSON-BODY)

Antoine Raimbault/1978年、フランス・パリ生まれ。映画の編集に携わりながら監督として短編映画を製作。製作した4本の短編はいずれも国内映画祭で賞を獲得。なかでも「Vos Violences」(2013年)では本作でも実名で描かれるデュポン=モレッティ弁護士本人を主演にし、10を超える賞に輝いた。本作が長編デビュー作(写真:HUGUES LAWSON-BODY)

「私は確信する」/事件を独自に調べるノラは無罪を確信するが──。2月12日から全国順次公開 (c)Delante Productions - Photo Severine BRIGEOT

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「エリン・ブロコビッチ」/発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、価格1410円+税/DVD発売中

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 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

【映画「私は確信する」の場面カットはこちら】

*  *  *
 2000年2月27日、フランス南西地方の街で38歳の女性スザンヌ・ヴィギエが姿を消した。スザンヌの夫で3人の子の父であるジャックが妻殺しの容疑で逮捕されるが、証拠はなく、遺体も一向に見つからない。さらに、妻に愛人がいたことから、メディアは映画マニアの夫になぞらえて「ヒッチコック狂による完全犯罪」と無責任に事件を煽り立てる──。

 アントワーヌ・ランボー監督(42)の長編デビュー作「私は確信する」は、通称“ヴィギエ事件”と呼ばれるこの未解決事件をもとにした裁判サスペンス映画だ。ランボー監督が事件に興味を持ったのは09年、事件発生から9年越しに裁判が開始した時だった。

「友人から『君はこの事件に絶対に興味を持つよ』と言われ、裁判を傍聴し、そこで彼と彼の子どもたちと知り合い、話を聞くことができました」

 フランスでは事件から裁判まで時間がかかることはままあるが、それでもこの事件は特殊だった、と監督は言う。

「ジャックは9年もの間、容疑者とされ、人生を破壊され、精神的にも病んでいました。私ともあまり話はできなかった。そんななかで事件直後から彼と子どもたちを支え、闘ってきた女性エミールに出会いました。私自身も強迫観念的に事件を調べ、ジャックの無実を確信したのです」

 裁判は翌年の第2審で無罪判決が下る。しかし映画で監督が描きたかったのは彼の無実だけではない。登場人物はほぼ実名だが、事件に別の視点を与えるため、あえてフィクションで制作した。エミールを骨格に作られたヒロイン・ノラの視点で物語は進む。

 ノラはジャックの弁護を担当するデュポン=モレッティ弁護士から250時間に及ぶ膨大な関係者の通話記録を調べる作業を依頼される。録音を聞くうちにノラはスザンヌの愛人だった男の通話記録に気づく。「真犯人はこの男ではないか?」──調査に没頭し、新たな証拠を追い「ジャックは無実だ!」と突き進むノラ。だが、映画はそんなノラの正義を賛美しない。それが本作のポイントだ。


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