全日本卓球選手権の女子シングルス決勝。大逆転で伊藤美誠を破りガッツポーズする石川佳純/1月17日、丸善インテックアリーナ大阪 (c)朝日新聞社
全日本卓球選手権の女子シングルス決勝。大逆転で伊藤美誠を破りガッツポーズする石川佳純/1月17日、丸善インテックアリーナ大阪 (c)朝日新聞社

 若手の台頭に苦しんできた卓球の石川佳純が、全日本選手権で優勝した。気弱になっていたこともあるというが、自分を見つめ、自分を信じて結果を掴んだ。AERA 2021年2月1日号に掲載された記事を紹介する。

*  *  *

 石川佳純(27)はあのとき、自信に満ちていた。リオデジャネイロ五輪を7カ月後に控えた2016年1月のことだ。

「自分が成長し続ければ、追い抜かれることはない」

 当時22歳。全日本選手権4度目の優勝を、3連覇で飾ったばかりだった。エースの座は揺るぎない、はずだった。

 リオ五輪後、卓球界の勢力図は一気に変わる。台に近い「前陣」から離れず、ボールの上がりばなを次々にたたく「高速卓球」が得意な若手が台頭。ラリーで一時代を築いてきた石川は、以前のように勝てなくなった。

■同世代がいない心細さ

 立ちはだかったのは、石川より8学年下の00年生まれの選手たちだ。17年4月のアジア選手権で日本勢21年ぶりの金メダルに輝いた平野美宇(20)、伊藤美誠(20)、早田ひな(20)らがすさまじい勢いで力をつけた。

 全日本での成績に、もがく石川の姿が透ける。17年の決勝では2─4で平野に完敗。18年は準決勝で伊藤、19年は6回戦で早田に敗れ、昨年の決勝も1─4で早田に一蹴された。

 石川の弱音を聞いたことがある。19年12月、中国・鄭州だった。苦しみ抜いた末に東京五輪代表を確実にした翌日、苦笑を浮かべていた。

「同世代や年上の選手が(日本のトップレベルに)いないのは、少し心細い。うまくいかない時、同年代の選手がいないと『あ、もう(年齢的に)ダメなのかな』と思いやすくなる部分は、正直あるのかなって」

 18年秋には4学年上の福原愛さん(32)が引退した。石川は周囲から「ベテラン」と呼ばれるようになり、自分の伸びしろに疑問を持つようになった。

「『若い選手の方が中国選手に勝てる』みたいな疑いの目を向けられていることは知っています。もちろん(直接)言われたことも。プレースタイルがダメなのかなとか思うこともあった」

次のページ