その結果、物語は全く別の展開となった。

「たった1、2年なんですけど、私自身の年齢も関係したように思います。18年に書いていた時にはこれしかないと思っていた選択が、20年になってみると、必ずしも自分にとってつらい選択ばかりしなくてもいいと思うようになりました。もっと自分で決めて生きていけるようになってもいいんじゃないかなって」

 そして、書き直しているその最中に新型コロナウイルスの世界的な大流行が起きた。

「東京の千駄ケ谷の飲食店の話なので、この状況を無視してオリンピックを間近に終わるのは違うと思いました。今のコロナ禍の空気を小説の中に留めておきたいということで、ラストが変わりましたね」

 誰もが想像していたものとはまったく違うものになってしまった2020年。その空気をそのまま閉じ込めたようなラストはぜひ本編で味わってほしい。(ライター・濱野奈美子)

■ブックファースト新宿店渋谷孝さんオススメの一冊

『美川べるのといかゴリラのまんが飯』は、なんでもありの「飯漫画」。ブックファースト新宿店の渋谷孝さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 今話題のエッセー漫画家(いかゴリラ)にアポが取れた編集者が考え出した企画は、「先輩漫画家(美川べるの)とコンビを組ませることで断りづらくさせよう」だった。こうしてコンビを組むことになった2人のお題は「飯漫画」。画力があまり高くない2人は、そんなお題を乗り越えることができるのでしょうか。

「まんが飯」というタイトルから、「この作品は古今東西マンガに出てくるご飯を作って食べるエッセーなのだろう」と思う方が多いかもしれませんが、全然違います。「BLマンガに出てくる朝食」「植田まさし先生が描く酔っ払いが持って帰るお土産的なアレ」「可愛いスイーツデコクッキー」などパワーワードが満載。

 ほかにも絵の上手な漫画家さんから料理の絵の描き方を習ったり、実在するコラボカフェに突撃したり、なんでもありの勢いのある作品です。

AERA 2021年1月18日号