科学者の視点を日常の言葉に翻訳? 新田次郎文学賞受賞作家が、人々の傷心に希望を灯す (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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科学者の視点を日常の言葉に翻訳? 新田次郎文学賞受賞作家が、人々の傷心に希望を灯す

濱野奈美子AERA#読書
伊与原 新(いよはら・しん)/1972年、大阪生まれ。『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞、『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞。他の著書に『ブルーネス』など(撮影/写真部・掛祥葉子)

伊与原 新(いよはら・しん)/1972年、大阪生まれ。『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞、『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞。他の著書に『ブルーネス』など(撮影/写真部・掛祥葉子)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。

『八月の銀の雪』は、孤独なシングルマザーと博物館勤務の女性、夢を諦めた男と迷い伝書鳩といった登場人物たちが、科学の揺るぎない真実によって傷ついた心に希望の灯りをともす五つの短編集。著者の伊与原新さんに、同著に込めた思いを聞いた。

*  *  *
 人生につまずいた人が、ふとした出会いから再び歩き出すきっかけを掴(つか)む六つの短編が収録された『月まで三キロ』で「第38回 新田次郎文学賞」を受賞した伊与原新さん(48)。待望の新作では、前作で見せた鮮やかな筋運びもさることながら、さらに社会のより暗い部分にも切り込んでいる。

「前作で『ほっこりしました』みたいな感想が多くて、それはぜんぜん嫌なわけじゃないんですけど。今回はもうちょっと苦味やダークなところも要素として濃くしましょうと編集者と話して、科学の功罪というか、少し硬派なところも入れましたね」

 東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を修めた研究者から小説家に転身したという経歴から、これまでの作品も科学的な要素と密接に結びついていた。今作でも日常の中で科学のエッセンスに触れた人たちが、ふっと自分を取り戻すような五つの瞬間が描かれる。

 例えば、就活連敗中の理系大学生と無愛想で手際が悪いベトナム人のコンビニ店員の出会いが綴られる表題作は、人間の多面性と地球の内部構造が対比される。意外にも一番苦労した作品だったのだとか。

「自分ではいったい何を書いているんだろうって(笑)。でも面白いって評判がよかったんです。地球の中で何がおこっているかは僕らにはそんなに目新しいことではないんですけど、思う以上にそれが強烈だったんですかね。だとしたら、いかに我々がそういうことをアピールしてこなかったかということでもありますね」


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