さらに、現状では「先着優先ルール」といって、先に計画・建設された電源は、現在動いていなくても容量確保することになっている。ただし、梶山弘志経産相は20年7月に「ルール見直し」に言及。混雑している場合は出力を抑制する前提で再エネなどの接続も行う「ノンファーム型接続」が千葉方面で試行実施され、21年度からはこの方式が、全国に広がる見通しとなった。山家教授はこの動きを歓迎しながらも、さらにこう指摘する。

「ローカル系統はなお既存ルールの世界にあり、早急なルール変更が求められている」

 もう一つ、山家教授が注目するのが洋上風力発電の「海底ケーブルで結ぶ直流送電」計画だ。12月15日の洋上風力官民協議会で新たな導入目標が設定された。同計画の具体的検討がビジョンに明記されたことは画期的で、日本のエネルギー史に残る事件だという。

「風力発電に力を入れる菅首相の本気度がうかがえる」(山家教授)

 市民風力発電の鈴木亨社長は、「送電線への接続障害問題で、10カ所くらいの建設計画が滞っている」と嘆く一方、「先着優先ルール」見直しの動きを歓迎する。

「再エネもすべて接続させ、原子力や火力発電などが事実上指定席だったルールの変更を、ぜひ加速してほしい」

 GFAでは来年、「エネルギー自治、CO2削減」の動きをさらに加速していく方針だ。生活クラブが手掛ける、現在進行中のエネルギー計画のなかで半澤氏が注目するのは、山形県遊佐町の「庄内・遊佐太陽光発電所」と神戸市民中心の「住吉川小水力市民発電所」だ。

「庄内・遊佐」は、19年4月に運転を開始、年間1万8千メガワット(5700世帯分)を発電する。地元庄内地域の参加を求め、エネルギーばかりでなく剰余金を積み立て「基金」を設置し、経済の「地域循環」を目指す。ここでも夢風のような交流を計画している。半澤氏は言う。

「エネルギーを自治し、エネルギーでつながる地域づくりを飛躍させる年にしたい」

(ジャーナリスト・菅沼栄一郎)

AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号より抜粋