家で過ごす時間が増え、同時にものも増えた(撮影/写真部・馬場岳人)
家で過ごす時間が増え、同時にものも増えた(撮影/写真部・馬場岳人)

 おうち時間が増えると同時に、仕事道具や日用品など、多くのものが家に持ち込まれた2020年。多くの家庭で「片付け」問題が起きている。AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号は「片付け」を特集。

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 都内在住の50代の女性は、新型コロナ感染が拡大した3月頃から「ずっと家の中に家族がいる状態になった」という。

 IT企業に勤務する夫は早々に在宅勤務が言い渡され、高校生の息子2人は自宅からオンラインで学習。そこで勃発したのが「片付け」問題だ。

 3LDKの自宅で、子どもたちには子ども部屋があるが、書斎はない。夫は寝室を仕事部屋代わりにした。昼間はそれぞれの部屋で過ごしながらも、誰かしらが入れ代わり立ち代わりリビングにやってきては何か食べたりテレビを見たり。以前はそれなりにすっきりしていたリビングのテーブルは、子どもや夫が持ち込む書類やら何やらで、常に半分ほど埋まっている状態となった。

 女性はもともと、片付けは苦手。それでも、コロナ以前はなんとかやり過ごしていた。取り込んだ洗濯物は、一時的にバサッと置いておき、いつもなら夫が帰ってくる夕方までには畳んでいた。それなのにいつも家にいるようになった夫は、その「一時的」な状態を目にするたびにチクチク言ってくる。

「これはどうしてここにあるの? いつまでここに出しっぱなしなの?」

 女性の居場所はリビングだけなので、リラックスする暇もない。誰かが来るたびにビクッとして、片付けをするフリなどをしてしまう。

「リビングはみんなで使っている場所。それなのになぜか、散らかっているのは私のせいだと家族から思われている」

 女性の不満は募ったが、言い返せば喧嘩になる。もともと、片付け下手という負い目もある。気晴らしに旅行に出ることもできず、散らかった、いつもよりも人口密度の増した家の中ですべてをしなければならない。夫の在宅勤務の延長が8月に決まりさらに我慢を重ねた10月、帯状疱疹が出た。

「今年は年末年始も、ずっと家にいることになる。どうなるのか、今から心配です」(女性)

 新型コロナの感染拡大により、片付けの必要性は増している。宅配収納サービス会社「サマリーポケット」が今年9月に実施したアンケートでは、76.9%が「おうち時間が増えた」と回答。そのうち半数近い35.8%の人が日々の片付けの機会が増えたと答えている。年末年始の片付けや大掃除についても、26.4%が例年以上に実施する予定だと回答した。

 一方で、片付け下手にとっては試練の時だ。アエラが12月中旬にウェブで実施したアンケートでも、これまで以上に部屋の散らかりが気になるようになった、という声が多くあった。

「たくさんのモノが視野に入ってくるので、仕事にも集中できないし、部屋が汚いので片付けなければという強迫観念と片付けられないというコンプレックスが常にある」(東京都在住・60代女性)

(編集部・高橋有紀)

AERA 2020年12月28日号-2021年1月4日合併号より抜粋