AERA 2020年12月14日号より
AERA 2020年12月14日号より

 国内で承認されている新型コロナ治療薬はレムデシビルのみ。米国ではすでにレムデシビル以外にも4つの薬や療法が承認されている。どんなものなのか。AERA 2020年12月14日号から。

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 米国では、米食品医薬品局(FDA)がレムデシビル以外にすでに4種類の治療薬・療法の緊急使用を承認している。うち2種類は、新型コロナウイルスに対する抗体を人工的に作った「抗体医薬」だ。トランプ大統領が投与を受けた、2種類の抗体を混ぜた米リジェネロンのものと、米イーライリリーのものだ。

 いずれも軽症から中等症の患者が対象で、入院や救急搬送を予防するために、外来で点滴による投与を受けることを想定している。このため、基本的に外来で新型コロナウイルスの治療をしない日本に導入されるかどうかは不透明だ。

■血漿療法を緊急承認

 もう1種類は、レムデシビルとの併用を条件に緊急使用が認められたイーライリリーのバリシチニブ(商品名オルミエント)だ。関節リウマチ薬として開発され、炎症を抑える作用がある。日本でも関節リウマチ薬としては承認されている。

 ただし、現行の米国立保健研究所(NIH)のガイドラインは、バリシチニブには体の細胞の増殖などに影響を及ぼす可能性があるため慎重な使用が必要なのに対し、新型コロナウイルスに対する効果は十分にわかっていないとして、使用を「推奨しない」とする。

 緊急使用が承認されたもう一つは、回復した患者の血漿(けっしょう)を投与する血漿療法だ。血漿は、血液から赤血球や白血球といった血球を取り除いた液体成分で、その中には新型コロナウイルスに対する抗体が含まれる。

 科学的根拠に基づく健康情報を提供するために医師らが作る世界的なネットワーク「コクラン」は、8月19日までに公表された、総計約3万8千人が参加した血漿療法の臨床試験19種類の結果を解析した。そして、「効果はまだ不確かである」とした。進行中の臨床試験が138種類あるので、結論が出るにはまだ時間がかかりそうだ。

 当面、治療薬の選択肢が少ないまま、重症患者の治療をしなければならない状態が続く。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2020年12月14日号より抜粋