ウイルスが変異しても、免疫が有効に働くとはどういうことか。米国の研究機関が6月、新型コロナに感染し、入院せずに回復した20人の体内で免疫を司る「T細胞」が有効に働いたことを証明したという論文をまとめ、科学誌セルに掲載された。初めてかかるウイルスを免疫が撃退できた理由を、奥村教授はこう説明する。

「免疫をウイルスと戦う軍隊だと考えると、一度感染したり、ワクチン接種を受けたりして身につけた『抗体』は特定のウイルスをピンポイントで攻撃するミサイルのような、強力な兵器です。それに対して、T細胞は地上軍のようなもの。未知の敵とも戦う重要な役割を担っています。例えば去年風邪をひいた人などは、T細胞がしっかり強化されているのです」

 とはいえ、様々な種類のウイルスが世界中から集まり、病原性や感染力が強いウイルスが変異で生まれることはないのか。日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大教授はその可能性について否定的だ。

「ウイルスは自分が生き延びて様々な遺伝子を残そうとする方向に進化が働きます。宿主となる人間を殺してしまうような方向に向かうのは、ウイルスにとってはいい話ではありません」

 奥村教授も言う。

「免疫とウイルスの闘いでは、最終的には免疫が必ず勝ちます。それほど免疫というのは巧妙にできていて、今回の新型コロナとの闘いでも、重症者数や死亡者数の推移を見ると実際にそうなりつつあります」

■対策は「迅速」と「個人」

 新型コロナは経済にもすさまじい打撃を与えた。

 帝国データバンクの調べ(11月16日現在)によると、破産や民事再生、事業停止などの「新型コロナ関連倒産」は全国で702件。業種別では飲食店(105)、ホテル・旅館(65)、アパレル・雑貨小売店(46)、建設・工事業(同)、食品卸(36)の順になる。負債総額は約2953億円で5億円未満が全体の8割以上を占める一方、東証1部の老舗アパレル「レナウン」など負債100億円以上の倒産も3社あった。

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