感染拡大が懸念される中、東京・渋谷のスクランブル交差点は多くの人々であふれていた/10月22日(写真:gettyimages)
感染拡大が懸念される中、東京・渋谷のスクランブル交差点は多くの人々であふれていた/10月22日(写真:gettyimages)

 新型コロナの感染拡大が止まらない。東京五輪で顧客から変異したウイルスの持ち込みが懸念される。さらに経済との両立など課題は山積みだ。AERA 2020年11月30日号で掲載された記事から。

【グラフ】世界の大都市で気温の低下と感染者数に相関

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 国際オリンピック委員会のバッハ会長が15日に来日し、観客を入れての開催に強い意欲を示した東京オリンピック。気になるのは、様々な国からの訪日客が持ち込むウイルスだ。

 ニッセイ基礎研究所の高山武士・准主任研究員は10月、世界の主な50カ国について新型コロナの感染拡大状況を評価している。10月14日までのデータだが、致死率に注目すると日本は1.8%で韓国と同じ。中国やエジプト、スウェーデンなどが5%台で高く、メキシコは10%を超えていた。高山氏が指摘する。

「新興国では不十分な保険医療体制などによって厳しい封じ込め政策をしてもなかなか収束しなかった国があります」

 一方で、同じ先進国でも国ごとに致死率や感染の広がり方は大きく違う。理由の一つとして考えられるのが、流行しているウイルスそのものの毒性や伝播力が違うという説だ。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう説明する。

「変異を経て、世界中でいろんなタイプのウイルスが流行していますが、毒性については、一般論として東アジアは弱くて欧米が強いと言われています。根拠としてしばしば言及されるのは、第1波のときに米国では、アジアタイプが流行った西海岸と欧州タイプが流行った東海岸で致死率が全然違いました」

 カリフォルニアよりもニューヨークの致死率が高かったが、因果関係ははっきりしない。

「ウイルスの違いで説明できるのか、まだ確定的なことは言えない状況です」(上医師)

■変異しても免疫は働く

 一方、免疫学の権威である奥村康・順天堂大学医学部特任教授はウイルスの変異による毒性の違いを指摘した上で、「恐れなくていい」と話す。

「日本や韓国で流行った『S型』というウイルスが強毒性に変異した『L型』が欧米で流行し、多数の被害を出しました。しかし型が変異しても、体内にある抗体や免疫は有効に作用するので、変異したウイルスの再上陸を恐れる必要はありません」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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