AERA 2020年11月16日号より
AERA 2020年11月16日号より

 冬の到来を目前にした欧米で、新型コロナウイルス感染者の増加が止まらない。世界保健機関は、長びく後遺症への対策を各国政府に呼びかけた。心臓・血管系の障害から脱毛まで、症状は多岐にわたる。AERA 2020年11月16日号から。

【図】感染から2カ月続く「後遺症」の内訳はこちら

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 世界保健機関(WHO)は10月30日、新型コロナウイルスの感染拡大だけでなく、感染後に何カ月も続くさまざまな後遺症についても注意喚起するため、体験者の証言を紹介した。

 最初に登場したのは英国のコンピューターエンジニア、リス・ヒシュミーさんだ。

「26歳の私は感染するまでいたって健康でした。このようなさまざまな症状を体験するのは生まれて初めてで、恐ろしくなりました」

 感染して8カ月後の今も、まだ疲労感や胸痛、動悸(どうき)、消化不良が残り、頭がぼーっとしたり、短期記憶が失われたりすることもあるという。

「体じゅう、感染の影響を受けていない部位はありません」

■後遺症の患者にケアを

 英リバプール熱帯医学研究所で感染症の疫学を研究するポール・ガーナー教授は、

「感染当初はすぐに回復すると思っていました。まさかこのウイルスによって、自分の人生から7カ月間が消えて無くなるとは想像もしませんでした」

 と証言した。ガーナーさんも、感染する3月以前の体調は良好だった。しかし感染後の4カ月間は疲労感や頭痛、気分の変調に、その後の3カ月間は激しい疲労感に悩まされた。しかもその間、症状が改善したと思うとまた悪化するといった具合に、体調の上昇、下降を何度も繰り返した。感染から7カ月経った10月に入ってようやく、快方に向かい始めたという。

 WHOのテドロス・アダノム事務局長は、加盟国政府に対し、こう強調した。

「後遺症は、身体のあらゆる部位に起こり、しかもしばしば複数の部位に重複して起こる。後遺症の存在をきちんと認識し、患者が治療やケアを受けられるようにすることが各国政府の緊急の責務だ」

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