


アイヌの工芸品を紹介する展覧会が世代や性別を超え多くの人を集める。漫画などの影響に加え、マイノリティーへの視線も変化している。AERA 2020年11月16日号に掲載された記事を紹介する。
【母から娘へと宝物として受け継がれた 祭礼用の首飾りはこちら】
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近年、アイヌ文化への注目が高まっている。連載が続くベストセラー漫画『ゴールデンカムイ』のヒットがあり、今年7月には北海道白老町に、アイヌ文化の復興・発展を目的とした「ウポポイ(民族共生象徴空間)」も開業した。
そんな中、日本民藝館(東京都目黒区)で開催中の「アイヌの美しき手仕事」展(11月23日まで)が話題だ。
■老若男女が押し寄せる
「なぜアイヌにあんなにも美しく物を作る力があるのであろうか。今も本能がそこなわれずに、美を作り出す働きがあるのであろうか」
日本民藝館の創始者でもある柳宗悦は、かつて『アイヌへの見方』でこのように書き、アイヌ民族の工芸と人々を讃えた。
1941年、柳は同館で「アイヌ工藝文化展」を開催する。展示を担当したのは、柳を師と仰いだ染色家の芹沢ケイ(※ケイは金偏に圭)介。アイヌの造形を美術館で紹介する試みだった。
以来、約80年ぶりに企画された大規模な展覧会なのだ。
イラクサやオヒョウなどを材料にした自然布に、アイヌならではの文様が施された衣裳は、大胆なデザインと緻密な手仕事に圧倒される。大ぶりの首飾り(タマサイ)は祭礼用で、母から娘へと宝物として受け継がれたもの。様々な木工の生活用具は、造形的にも美しい。
「本展への関心の高さは予想以上でした。実は2013年にも、今回より小規模なアイヌの展覧会を開催したのですが、来館者の数、反応の多さがまったく違います」と、本展を担当した学芸員・古屋真弓さんは語る。