カナダ人家庭にオンラインでプチホームステイする企画は募集枠がすぐに埋まり、追加日程も組まれた。参加者には事前に現地のお菓子とお茶が送られた(写真:クラブツーリズム提供)
カナダ人家庭にオンラインでプチホームステイする企画は募集枠がすぐに埋まり、追加日程も組まれた。参加者には事前に現地のお菓子とお茶が送られた(写真:クラブツーリズム提供)
AERA 2020年11月2日号より ※記載情報は、2020年10月22日現在のものです。
AERA 2020年11月2日号より ※記載情報は、2020年10月22日現在のものです。

 コロナ禍で海外渡航に制限がかかるなか、「オンライン留学」という選択肢に期待がかかる。日本にいながらオンラインで異国の文化を体験できる。AERA 2020年11月9日号から。

【表】オンライン留学の一例 授業時間、料金、特徴などはこちら

*  *  *

 留学の目的は、本来、教室の中だけで完結するものではない。異文化の中に身を置き、異なる価値観や風土、歴史に出合うことも大切だ。

 こうしたニーズをかなえるオンライン企画も出始めている。

「うちにはメイプルシロップは2本ありますよ。こちらのボトルは4リットルです」

 カナダのプリンスエドワード島に住むヘレンさんが、家庭で使っているメイプルシロップを画面で見せると、その大きさに参加者たちは驚き、声を上げた。

 10月18日、旅行会社「クラブツーリズム」と英会話教室「イーオン」がコラボし、初めて実施した「英会話レッスンとカナダ・プリンスエドワード島の家庭訪問でプチ留学体験」のひとコマだ。参加費は4千円。25人の定員は募集開始からあっという間に埋まった。

 参加者はオンライン会議システムZoomを使い、午前は旅の英会話レッスンを受講。夜は『赤毛のアン』の舞台で知られるプリンスエドワード島のヘレンさん宅を訪問した。時差は12時間で、現地は朝の7時だった。

■人との距離が近い

 ヘレンさんは日本で暮らした経験があり、高校生と大学生の娘に日本名もつけるほどの親日家だ。英語を教え、多くのホームステイも受け入れてきた。

 プリンスエドワード島を紹介するスライドを見たり、クイズを楽しんだりした後、ヘレンさんに英語で質問するコーナーに移った。

「今の気温は?」
「お薦めの料理は何ですか?」
「犬は好きですか?」

 ヘレンさんは気さくに、前述した台所のメイプルシロップを見せたり、ペットのを紹介したり、部屋の様子をカメラで映したりなどして、参加者と打ち解けた温かな時間が流れた。

 終了後、参加した高校1年生の女性(15)は、

「現地の人とコミュニケーションが取れ、雰囲気も味わえ達成感がありました」

 と興奮気味に語った。

 企画したクラブツーリズム海外旅行部の渡嘉敷(とかしき)瑛梨さん(33)は言う。

「初めての企画だったので改善点はまだありますが、10代から70代まで幅広い層が参加し、参加者の方々の意識や意欲の高さに手応えを感じました」

 オンラインで学んだり、つながったりすることが、世界的なニューノーマルになった。現地の気温や季節の香りなどは体感できないが、人との距離はリアル以上に近く感じられることもある。オンライン留学の選択肢と可能性はまだまだ広がりそうだ。(編集部・石田かおる)

AERA 2020年11月9日号より抜粋