山口代表が表立って菅首相と面会したのは、9月27日の公明党の党大会とその翌日だ。これに先立ち、斉藤鉄夫副代表と自民党の二階俊博幹事長も会談している。その場で住民投票をめぐる対応が話し合われたかは不明だが、公明党にしてみれば、判断を間違えば、連立関係にも影響する。水面下の調整で、菅首相が山口代表の大阪入りを了承したことは想像に難くない。

 菅首相と松井市長の距離が近いことは、永田町では有名だ。特に菅首相が官房長官時代に追い詰められた森友学園をめぐる問題では、騒動の発端である大阪側に松井市長(当時は大阪府知事)がいたことが、官邸には不可欠だったと菅首相に近い国会議員が打ち明ける。

「横浜を地盤とする菅さんと、松井さんをつなぐのはカジノ誘致です。また、2025年の万博を大阪に誘致すべく国政側で動いたのが、官房長官だった菅さんでした。ある意味、公明党より日本維新の会の方が自民党に近いですから。菅政権誕生は維新にとって、党勢を全国に拡大する上でも好機と捉えているのは間違いありません」

 菅首相は内閣発足にあたり、8人の大阪選出の議員を副大臣と政務官に抜擢している。まるで、住民投票では維新に冷や水を浴びせられた大阪自民党をねぎらう人事のようにも見える。(編集部・中原一歩)

AERA 2020年11月2日号より抜粋

後編【大阪都構想で大阪市は「あんこのない饅頭」に? それでも実現めざす維新の狙いは…「大看板」の復帰】に続く