そもそも、公明党は自民党と共に住民投票に「NO」の立場だった。山口代表も演説の中で、これまで「反対」していた経緯を釈明。その上で2011年、二重行政の無駄を廃止するために力を貸して欲しいと、当時の橋下徹・大阪府知事から相談があった逸話を披露。後に12年、国会で可決される「大都市地域における特別区の設置に関する法律案」の必要性を、当時、関心が薄かった与党民主党に説いて回ったのは公明党だったと、これまでの反対姿勢を打ち消すように熱弁した。

 しかし、公明党大阪府本部の関係者は真相をこう打ち明ける。

「国政と大阪では政治のパラダイムが違う。大阪は今や維新の牙城で、ここに逆らうことはできない。公明党は大阪だけでも、衆参、府市合わせて219人の現職議員を抱えている。これまでも一部の選挙区では維新とすみ分けており、本格的に維新を敵に回すことは現状ではできない」

 別の関係者によると、昨年の大阪市長・大阪府知事ダブル選挙で大勝した維新から「衆院選挙で刺客を送る」と水面下で賛成を迫られた公明党が、やむを得ず、態度を一変させたという経緯があるという。

 国政では自民党と連立を組みながら、大阪では自民党を見限り維新と連携する。つまり「吉村・松井・山口」のスリーショットは、公明党が維新との協力に舵を切った証しでもあるのだ。

 公明党員、創価学会員の間でも、住民投票への賛否は分かれていた。だからこそ、これまで反対の立場だった山口代表が、直々に賛成のお墨付きを与えたことは効果があった。山口代表の来阪以降、繁華街を中心に、公明党の選挙の常套手段である口コミ作戦、通称「F(フレンド)作戦」が展開されている。

■水面下で菅首相の了承

 しかし、山口代表の来阪は、もっと大きな力が働かなければ実現しなかったと公明党幹部は断言する。そもそもこの大阪行きのスケジュールも、直前まで番記者にさえ知らされることはなかった。

「当初、代表の大阪行きには慎重でした。大阪という特殊事情があるとは言え、国政で連立を組む自民党に喧嘩を売るのです。当然、何らかの形で了解をとる必要があるでしょう。その相手は菅義偉首相しかいない。だって、自民党幹部はいまだに誰も大阪入りしておらず、その予定もないのですから」(前出の公明府本部関係者)

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