金剛宝寺「オンライン葬儀」の様子。左が住職の井上仁勝さん。お供えの花、果物、遺影も寺側が準備し、費用はすべて込みで10万円(税込み)だ(写真:金剛宝寺提供)
金剛宝寺「オンライン葬儀」の様子。左が住職の井上仁勝さん。お供えの花、果物、遺影も寺側が準備し、費用はすべて込みで10万円(税込み)だ(写真:金剛宝寺提供)

 新型コロナの影響が、冠婚葬祭の儀式にまで及んでいる。特に法事や法要にオンラインを活用する寺院は数年前から増加傾向にあったが、現在では墓参りや葬儀にも広がっているという。儀式のあり方は今後、どのように変化して行くのだろうか? AERA 2020年8月10日-17日合併号に掲載された記事で、寺院関係者へのアンケート結果を紹介する。

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 新型コロナの感染拡大は、寺院のあり方や儀式のかたちを変えようとしている。大正大学地域構想研究所では今年5月にアンケートを実施、517の寺院関係者から回答を得た。

「葬儀についての変化」は、8割以上が「会葬者の人数が減った」、4割が「一日葬など葬儀の簡素化」と回答。法事についても8割以上が「中止や延期」「参列者の人数が減った」と回答し、寺院文化の衰退や寺離れを懸念する声もあった。一方で、多くの寺院が注目したのがオンラインの活用だ。コロナ禍をきっかけにZoomを使った座禅会、法話の動画配信などに取り組んだという声や、「お寺からの情報発信用のWebページを持っていなかったが、必要性を強く感じている」といった声もあった。調査を担当した同大専任講師で僧侶の高瀬顕功さん(37)もこう話す。

「回答者のうち、2割ほどの方がオンライン対応に言及していました。ICTに長じているお坊さんはとくに、檀信徒の方とのつながり方として、新しいコミュニケーションツールに目を向けているようです」

 一方で、オンライン化に対する懸念を示す回答も多くみられた。「(オンライン化を)一時的なものと受け取らずに『今後もそれで良い』となってしまい、葬儀などの簡素化が進んでしまうのではないか」「高齢者など、PC・スマホの扱いに慣れない方を切り捨てる側面もある」「(法要のオンライン化は)見たことにしておけばいいやとなる気がする。厳かな雰囲気を感じていただくのも布教のあり方」などの回答が見られた。高瀬さんもこう指摘する。

「オンライン化は便利だという声がある一方で、『何か違う』という思いを抱く人もいます。法要も葬儀も、手間と時間がかかるもの。それを省くことによって、失われるものがある。直接会う、足を運ぶ、といったアナログのあり方を残しておくことは、寺院のオンライン対応において重要な点だと思います」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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