病院経営での最大のコストは人件費。多くの病院のコストの5、6割を占めています」

 この夏、日本医療労働組合連合会(医労連)に加盟する医療機関のうち、3割がボーナスを減額した。

 7月上旬、千葉県の船橋二和病院労働組合の8人がストライキして、県や市に訴えを行った。

 同院でも発熱外来や新型コロナ入院患者に対応するため、スタッフは奔走した。だが、夏のボーナスは、前年の1.0カ月分から0.9カ月分に減額された。書記長の柳澤裕子医師は、「仕方ないという空気の中、これ以上の労働条件の悪化は我慢できなかった」と話した。

 船橋二和病院を運営する法人幹部は「職員の奮闘には感謝している。報いたいと思っているが、4、5月は前年収益比が大幅なマイナスとなり、予算通りの賞与は出せないという話になった。労組・職員とは引き続き協議していきたい」と話した。

 医労連の森田進書記長は「今回はなんとか出したが、冬は出せないこともあり得ると説明した病院もある」と話す。

 病院経営に詳しいある税理士はこう分析する。

「患者が戻らないままでは、人件費、家賃、リース料などの固定費が高い病院は倒産の可能性があります。患者が戻る見込みがないため、融資に二の足を踏んだり、利息だけ払う期間が終了すると同時に潰れたりする医療機関が出ると考えられます」

 資産が潤沢な大学病院や国立病院機構など全国展開する医療機関と違い、「蓄えの少ない民間の中小病院が最も苦しい」(同)。

 7月に入り、全国の新規感染者数はピーク時に迫る日も増え、17日、東京の感染者数は293人を記録した。新型コロナウイルス感染が再び広がるなか、医療危機は刻一刻と迫っている。(ライター・井上有紀子)

AERA 2020年7月27日号より抜粋