「何で今年に限ってコロナ……」と思うかもしれないが、20年ほど前までの説明会はもっと素朴だったし、文化祭や体育祭も生徒本人たちが楽しむためだけにあった。近年はそれが過度にデコラティブになっていたきらいがある。今回の混乱で、あるべき姿に戻ったと言えなくもない。

 今年はこれまでにない先行き不透明な中学受験になることは間違いないが、競争という意味での条件はみな同じ。差がつくとすれば、親の態度である。

「コロナのせいで、あれができない。これも足りない」と、親が不満や不安にさいなまれていると、それが子どもにも伝染する。「これも何かの縁だ」と思っておおらかに構えていたほうが、子どもだって安心できる。

 今年の中学受験における最強の武器は、小手先のテクニックや高度な情報戦ではなく、親の泰然自若とした心構えということになるだろう。

 少なくともわが子が、「中学受験の年にコロナが重なっちゃったから……」を、一生言い訳し続けることのないように導いてやらねばならない。(教育ジャーナリスト・おおたとしまさ)

AERA 2020年7月6日号より抜粋