チョークで書かれた「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」の文字(写真/ケイン岩谷ゆかり)
チョークで書かれた「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」の文字(写真/ケイン岩谷ゆかり)
シカゴ市内のユニクロなどが入るビルの入り口は対策が取られていた(写真/ケイン岩谷ゆかり)
シカゴ市内のユニクロなどが入るビルの入り口は対策が取られていた(写真/ケイン岩谷ゆかり)
「Love, not hate」の文字(写真/ケイン岩谷ゆかり)
「Love, not hate」の文字(写真/ケイン岩谷ゆかり)

 先日外に出たら、近所の子どもたちが「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」「Love, not hate(憎しみより愛)」という文字を、チョークで歩道に一生懸命書いていた。

 母親のライザ・イルージさんによると、4~7歳の子どもたち4人と最近、アメリカの人種問題について毎日のように話し合っているという。イルージさんはその際あえて、差別という言葉を使わないようにしているそうだ。子どもたちはまだ、人を見かけで判断するのがいかによくないことかもわかっていない。差別という言葉を先に知ることで、差別される側を「彼らは差別される人たちだ」とまず認識してしまうとよくないと思うためだ。今は、「私たち自身がみんなと友だちになるだけではなく、誰かが他の人にいじめられていたら、その人が誰であろうと味方にならなければいけない」と説明しているという。

 新型コロナウイルス対策によるロックダウンが進む5月末、米ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が黒人のジョージ・フロイドさんの首を9分近くも押さえつけ、死なせた事件が起きた。警官の人種差別や暴行に対して長年蓄積されてきた大勢の怒りが爆発し、全米で抗議デモが行われた。そのほとんどは平和的に始まったものの、地域によっては警察がゴム弾や催涙ガスを使用。デモ参加者との小競り合いが暴走化し、死傷者も出た。一部の人たちは公共施設やパトカーに放火したり、商店街を襲撃したりもした。

■量販店やスーパー襲撃

 世界的にはニューヨークやロサンゼルスの抗議デモがよく報じられたが、ミネアポリスに一番近い大都市であるシカゴでも、抗議活動が活発だった。

 参加者は当初、主にシカゴの中心部に集まった。通称ミシガンアベニューとして知られる高級商店街にあるノードストロームやメイシーズといった百貨店や、ナイキストアなどが集中的に襲撃された。しかし中心部への道が閉鎖されると、抗議の人々は南部や、私が住む北部の住宅街付近にもやって来た。普段は夜でも安心して犬の散歩に出られる街並みだが、近くのスーパーや量販店も襲撃されるに至った。市長によると、緊張感がピークに達したこの日、緊急通報が24時間で通常の4倍以上の約6万5千件も寄せられたという。平均で30分に2千件が殺到したことになる。

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人種の溝が深いシカゴ