注意すべきことがある。次亜塩素酸ナトリウム液に酸性の液体やアルコールが混ざると、有毒なガスが発生する。使用時は必ず換気をするとともに、他の液体と混ざらないようにすることが肝心だ。

 次亜塩素酸水を巡ってはこの4月から6月にかけて混乱が起こっていた。栃木県や山梨県では、公共施設や小中学校、バスの車内などでいっとき「空間の除染」を目的に次亜塩素酸水の「噴霧」を実施。しかし世界保健機関(WHO)が空間噴霧の効果について否定的見解を示したため、相次いで中止となった。5月29日には独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」が「次亜塩素酸水が新型コロナウイルスに有効か、現時点で確認されていない」と中間発表を行うと、これに対してメーカーや大学研究者からなる団体が「明らかな誤報」と反論、6月11日に記者会見を実施した。

 疫学を専門としWHOにも勤務した経験を持つ玉城英彦・北海道大学名誉教授は、こう言う。

「NITEと同様の条件で実験したところ次亜塩素酸水はコロナウイルスを30秒で不活化した。同様の実験結果は帯広畜産大学でも出ている。安全で手に入りやすくアルコールよりも皮膚に優しい次亜塩素酸水は、手指用の消毒液として推奨できる。一方、次亜塩素酸水の空間噴霧はエビデンスがないため慎重な検討が必要だ」

 厚生労働省や家庭用漂白剤のメーカーは「次亜塩素酸ナトリウム液の噴霧を吸引すると、嘔吐などの症状を起こす危険がある」と注意を呼びかける。コロナ予防の前に、きちんとラベルを見て成分を確認することが大切だ。(ライター・大越裕)

AERA 2020年6月22日号