2019年の参院選を舞台にした買収疑惑で検察の厳しい捜査を受けている河井克行前法務大臣(右)と妻の河井案里参院議員。逮捕の「Xデー」は国会閉会後とみられる (c)朝日新聞社
2019年の参院選を舞台にした買収疑惑で検察の厳しい捜査を受けている河井克行前法務大臣(右)と妻の河井案里参院議員。逮捕の「Xデー」は国会閉会後とみられる (c)朝日新聞社

 自民党の河井克行前法相と妻の案里参院議員に検察の捜査が迫っている。野党の追及から逃れるかのような国会閉会が、皮肉にも逮捕へのゴーサインになる。AERA 2020年6月22日号掲載の記事で、一連の騒動について振り返る。

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 広島を舞台にした検察と現職国会議員との攻防が佳境を迎えている。2019年7月の参議院選挙。初当選を果たした自民党の河井案里氏と、9月に安倍政権で法務大臣の職に就く夫・克行氏らが、県内の首長、市議会、県議会など地方議員、運動員らに現金を配ったというのだ。その額は2千万円超。すでに検察は国会閉会の直後、案里氏、克行氏を立件する方針を固めているという。

 発端は19年10月の週刊誌報道だった。案里氏が参院選挙時、自らの陣営の選挙運動員(ウグイス嬢)に法定を超える3万円という報酬を支払ったことが発覚したのだ。案里氏が即座に関与を否定する一方、克行氏は道義的な責任をとる形で早々と法務大臣の職を辞任した。2人は国会を欠席し永田町から姿を消す。現職の自民党議員の一人は、この時点で事件にはウラがあると直感したと語る。

「正直、ウグイス嬢にいくらの報酬を支払ったか程度のことは、永田町、とくに自民党の慣習では大きな問題ではない。けれども疑惑の段階で克行さんは法務大臣を辞任。案里さんが説明をはぐらかし、行方をくらましたと聞いて、これは絶対に何かあるなと直感しました」

 2人は国会に復帰を果たすが、その後、夫妻が支部長を務める政党支部に、自民党本部から合計1億5千万円が振り込まれた事実が発覚。同じ党公認候補でありながら、同選挙区で落選した溝手顕正氏陣営への選挙資金は、その10分の1の1500万円だったこともあり、疑惑が再燃した。

 20年3月。広島地検は案里氏、克行氏の公設秘書を逮捕、起訴。主犯格である案里氏の秘書の罪が確定すれば、連座制で案里氏は当選無効となるが、永田町では本件はこれで一件落着になるだろうと予想した。しかし、この段階で検察は、秘書だけでなく現職議員である夫妻の逮捕、起訴を見据えていた。

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