「広島地検の捜査で、広島の現職の首長に現金が渡っていることがわかったのです。その司令塔が克行氏だった。検察は買収罪の適用を視野に入れて動き出しました。通常、国会議員の捜査は東京地検特捜部が担当します。しかし、これまでの経緯もあって広島地検を管轄する大阪地検特捜部が聴取などで協力するものの、引き続き、現場の捜査は広島地検が担うことになったのです」(法務省関係者)

 実は、こうした最中に浮上したのが、安倍官邸主導による黒川弘務・東京高検検事長の定年延長の議論だった。

 タイミングは、大阪地検特捜部が、広島地検と組んで克行氏逮捕に向けて動き出した矢先。それだけに、法務省内では「この人事は河井夫妻案件と関連しているのでは」という臆測が広まった。結局、黒川氏は賭けマージャン騒動によって検察を去ることになり、現在では東京地検特捜部も加わる形で、検察が総力をあげて河井夫妻の立件に動き出している。

 政治資金規正法に詳しい東京駿河台法律事務所の金子春菜弁護士は、買収罪の成立要件についてこう説明する。

「現金が渡された日時がとても重要。それが公示の前なのか、選挙中なのか、その後なのか。それに加えて選挙期間中であっても、政党に対する寄付(陣中見舞い)であればセーフ。特定の選挙に出馬している本人であればアウトです。検察は携帯電話の履歴などを入手し、これが組織的な買収なのかを立証しているはずです」

 逮捕の「Xデー」は今国会の閉会後と言われている。仮に逮捕、起訴となれば、自民党総裁でもある安倍首相は選挙資金1億5千万円の原資を含めた詳しい説明を求められることになる。2人を重用してきたことへの責任も当然、免れないだろう。(編集部・中原一歩)

AERA 2020年6月22日号