植松さんは新型コロナへの応用に意欲を示す。

「新型コロナは呼吸器、消化器、目から感染すると言われていますが、ワクチンを注射後、抗原を呼吸器、消化器、目に投与することでIgAを十分に出させ、ウイルスの侵入を抑えることができると考えています」

 植松さんは、この新技術の実用化に向け、国内の製薬会社と共同研究を進めている。米製薬大手ファイザーは5日、ワクチンの臨床試験を始めたと発表したが、新技術はこのワクチンとは別物だという。

 ファイザーなどが開発しているワクチンは、先に述べた疑似的な感染によってIgG抗体を作らせるものだ。ただ、植松さんは「このワクチンには大きな懸念材料がある」と言う。

「コロナウイルスには『抗体依存性感染増強』という現象が認められます。最初の感染でウイルスに対応したIgGができると、2回目の感染時に重症化する現象です」

 抗体依存性感染増強とは、抗体が免疫細胞などへのウイルス感染を促進する現象だ。コロナウイルスが原因となるSARSやMERSに対するワクチン研究や、デング熱、ネコに感染するネココロナウイルス感染症の研究でも、抗体を持つ個体が再び同じウイルスに感染して重症化した例が報告されている。

「中途半端な量のIgGができると起きやすいようですが、詳細なメカニズムはわかっていません。PCR検査で陰性だった患者が再び陽性となる現象にも関連しているかもしれません」

 植松さんはこう指摘した上で、この現象に備えるためにも、バックアップとして新技術の実用化も進めるべきだと強調する。

「他のワクチンよりも開発に時間はかかると予想されますが、先行するIgG誘導ワクチンで思うような効果が出なかった際の次の一手になると思います」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年5月18日号より抜粋

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