「『障害があっても私は普通に大学生。私が障害者であることとは関係なく、普通に委員長をやるだけ』という言葉に決意を感じました」

 高岡さんが委員長に就任後、委員会ではデジタル化が進んでいる。会議では高岡さんがスムーズに参加できるようグーグルドキュメントを活用し、複数人で同時に書き込んだり、閲覧したりできるようにした。後で議事録をまとめる必要がなくなり業務が効率化。また、高岡さんの自宅には訪問介護のヘルパーが来るため、会議が延長すると途中で帰らなければならないことも。高岡さんは「みんなに申し訳ない」と言うが、時間の制約があるからこそ、内容の濃い議論ができる面もある。

 雙峰祭では毎年テーマを掲げていて、今年度は「多様性」の言葉を入れることが決まった。実行委員長自身がそのテーマを象徴する存在にもなる。実行委員の石井希さん(19)は言う。

「筑波大学は障害のある学生や留学生も多い。広いキャンパスで出店やステージ発表、学術的な研究紹介などを通して多様性をアピールしていきたい」

 ただ、活動をする中で困りごとも出てきた。高岡さんが利用している重度訪問介護のサービスは、昨年、重度障害のある国会議員が誕生し、仕事中に利用できないことが問題視されたが、実は学業中も利用できない。

 国は18年度から「重度訪問介護利用者の大学修学支援事業」を作って、大学でもトイレや食事など生活介助が受けられるように制度を整えたが、事業実施は市区町村の裁量に任され、利用できないことも。高岡さんもその一人だ。筑波大では自治体から修学支援を得られない学生に対して費用を負担し、休み時間のトイレや食事の介助サービスを提供しているが、課外活動の時間には提供していない。

「実行委員会の活動の時間はヘルパーに頼れないので、授業後にトイレを済ませてから来るようにしています。だからいつも遅れちゃって」(高岡さん)

 今後、学園祭本番が近づき、活動時間が増えていったら……。そんな不安も抱えている。重い障害がある学生は、一般の学生が当たり前のように楽しんでいるサークル活動などに参加するのが難しい現実があるのだ。

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