国内の大学や短大などで学ぶ障害のある学生は急増している。日本学生支援機構の調査によると、14年度に1万4127人だったが、19年度には3万7647人と、この5年間で2・7倍に増えた。全学生に占める障害のある学生の在籍率は1.17%になった。

 筑波大には現在、さまざまな障害のある学生が約150人在籍している。大学は、障害のある学生を支援する「ピア・チューター(支援学生)」を配置。授業の要約や板書を書き留めたり、配られた資料を整理したりしてサポートしている。ピア・チューターは事前に養成講座を受け、謝金も支給される。さらに定期試験の際には、障害によっては記述に時間がかかることに配慮して試験時間を延長したり、用紙や資料を拡大したりと個別に対応して、障害のある学生を支援している。

 高岡さんは小、中、高校と普通学校の通常クラスで学んだ。中学1年のとき、ひらがなの文字盤で文字を指で示し、支援員が答案用紙に書き写す方法で試験を受けたが、解答をひらがなで書いたため全問減点された。

「初めての社会の試験は忘れられません。本当は98点を取れているのに、ひらがなだからって60点ぐらいになっていて。すごく悔しかった」(高岡さん)

 当時、高岡さんを支援したNPO法人地域ケアさぽーと研究所理事の下川和洋さんは言う。

「漢字で解答する方法が整っていない中で、漢字が書けていないからと減点することは明らかに平等に反する」

 学校に合理的配慮を求めて交渉し、ひらがな表記による減点はなくなった。その後、高岡さんは授業や学校生活でiPadを使い始め、都立高校の受験ではiPadの持ち込みを認めてもらい、問題はすべて選択肢で解答し、合格した。

 現在、入試の際には受験生の障害に対してさまざまな配慮が行われるようになってきて、試験時間の延長や別室での受験、IT機器の持ち込みや代筆などが可能なケースもある。ただ、下川さんはこう指摘する。

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