4月上旬、月に1度の近所の公園清掃があった。公園の美化計画の段階から市民として参加してきた渡邉さんにとって、思い入れのある場所だ。

 今の時期、清掃は不要不急の外出に当たらないか心配もあったが、いつも通り開かれた。1カ月公園に行かないうちに、木の葉っぱの色が濃くなり、足元には小さな花が咲いていた。おしゃべりをせずにゴミ拾いや草刈りをしたあと、公園内の休憩スペースで、仲間と距離を取りつつ一緒に桜を食べた。

「いつもと違って、人のいない公園だったけど、みんなに会えて一緒に掃除ができた。たったこれだけのことをこんなに嬉しいと思ったことはありません。今、手帳に書けるのはささいなことばかりですが、そのたびに当たり前のことができる大切さを感じ、『よし、今日も生き延びたぞ』という気持ちになります」(渡邉さん)

 自分の気持ちを保つだけでなく、たとえば親子で一緒に手帳をつけて互いにできたことを認め合えば、信頼関係を深めることもできる。

「外出自粛の今は、自分自身や人間関係を見つめ直すチャンスでもある。感染が終息したとき、今よりもよい自分であるためにありのままの自分を受け入れて、思い込みという心のフタを取っ払いましょう」(永谷さん)

(ライター・井上有紀子)

AERA 2020年4月27日号より抜粋