耳と体で舌鼓を打つザ・スクリーントーンズによる最新サントラ『孤独のグルメ シーズン8』 (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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耳と体で舌鼓を打つザ・スクリーントーンズによる最新サントラ『孤独のグルメ シーズン8』

連載「岡村詩野の音楽日和」

岡村詩野AERA#岡村詩野
最新サントラ『孤独のグルメ シーズン8』のジャケット/地底レコード提供

最新サントラ『孤独のグルメ シーズン8』のジャケット/地底レコード提供

ザ・スクリーントーンズ/地底レコード提供

ザ・スクリーントーンズ/地底レコード提供

 今回リリースされた『孤独のグルメ Season 8』のサントラは、これまで以上に多彩でオマージュもたっぷり。しかも、久住以下、メンバー全員が曲ごとに作曲を担当しているから、それぞれの特徴や武器が生かされている。オープニングは主人公・井之頭五郎のテーマ(?)としておなじみ、カジュアルなファンク「Goo,Goo,Goro!」(久住)。そこから、ワルツのリズムに乗って、しっとりとしたギターやくすんだサックスが哀感を奏でる「Solitude」(久住、フクムラ)に続き、そのままマリンバやアコーディオンが愛らしい「グルメ探検隊お宝発見!」(河野)へ。いずれも歌のない小品なのでここまででまだ3分程度。なのに、場面がいくつも変化しているように聞こえる表情豊かな3分間だ。30秒少々の「エキゾチック飯」(栗木)から「ニコニコ中華」(河野)、「せつないほどにしあわせだ」(SHAKE)へと続く前半の流れは、まるで香辛料の利いたアジアン・フードを味わっているかのようだ。「江ノ電のテーマ」(久住、SHAKE)、「極上の舌鼓」(河野)、「珈琲と紅茶」(栗木)が並ぶ中盤では、暖かい海辺の喫茶店でリラックスした休日を堪能しているかのようで――という具合。芸達者なメンバーたちの真骨頂が発揮された曲が次々と飛び出してくるだけでなく、ギッシリと中身の詰まった30曲には見事にストーリー性さえある(括弧内は作曲者名)。

 今作の聴きどころとしては後半に控える「味覚のとびら」(久住、フクムラ)と「砂丘の夢」(SHAKE)だろうか。オルダス・ハクスレーの『知覚の扉』のタイトルを文字ったような「味覚~」は幻想的なアシッド・フォーク調で、かつてドアーズがそのバンド名をここからとったというエピソードさえ思い浮かべてしまう。「砂丘の夢」はアンビエント・ミュージックと言い切ってしまってもいい異色の一曲。近年、日本の70~80年代に作られた環境音楽やニューエイジと呼ばれる音楽が世界規模で一層見直されるようになっているが、そんな傾向とシンクロするかのような一面がこのザ・スクリーントーンズの作品から感じられるとはうれしい誤算だ。

 サントラの終盤はもちろんホットなファンクやダイナミックなロック・サウンドでフィナーレへと向かう。あたかもグルメざんまいの一日を過ごしたかのような達成感が味わえる約1時間だ。様々なルーツ・ミュージックだけでなく、時には実験的でさえある手法を用いてユニークに“調理”できるのは、久住らが音楽と食文化との間には切っても切れない密な関係があることを理解しているからこそ。新型コロナウイルス禍でなかなか外食できない今、原作漫画の作画を担当していた故・谷口ジローの絵を初めて用いたジャケットのアートワークにホロリとさせられながら、ゆっくりたっぷりと耳と体で舌鼓を打ちたい。(文/岡村詩野)

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岡村詩野

岡村詩野(おかむら・しの)/1967年、東京都生まれ。音楽評論家。音楽メディア『TURN』編集長/プロデューサー。「ミュージック・マガジン」「VOGUE NIPPON」など多数のメディアで執筆中。京都精華大学非常勤講師、ラジオ番組「Imaginary Line」(FM京都)パーソナリティー、音楽ライター講座(オトトイの学校)講師も務める

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