世界で猛威を振るう新型コロナウイルス。人類と感染症は今後どのような道を歩むことになるのか。AERA2020年4月20日号で、神戸大学病院感染症内科の岩田健太郎教授と本誌コラムニストの思想家・内田樹氏が語り合った(対談日は4月3日)。その中からここでは「ポスト・コロナ」について論じる。
※【岩田健太郎医師「この失敗は感染症の教科書で語り継がれる」 3密クルーズ船の“なぜ”】よりつづく
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内田樹(以下、内田):今回のコロナ禍は世界同時の出来事なので、各国政府の対応の適否が「センター試験」のスコアのように数値的に可視化されました。岩田先生が医師の視点で評価する国はどこでしょうか。
岩田健太郎(以下、岩田):(対談日の時点で)結果がほぼ出ている国は、中国と韓国です。中国は強権によって1千万人都市の武漢を封鎖するという強引な手段をとり、それによってウイルスを抑え込んでいます。また韓国も徹底的な検査をすることで感染規模を縮小させることに成功しました。世界でコロナを抑えつつあるのはまだ2国だけなので、評価は難しいですね。
内田:北半球での感染が広がりきった後、南半球でもパンデミックが起こると思いますか?
岩田:仮説としてはありえます。「ウイルスは熱と湿度に弱いから、夏になれば終わる」とよく言われますが、実際に今もコロナは南の地域で感染を広げているので、楽観はできません。2009年に流行して大騒ぎになった新型インフルエンザも「梅雨になれば終わり」といわれましたが、現実にはどうなったかご存じですか?
内田:あれは……どうなったんでしたっけ?
岩田:いま地球上で一番流行しているインフルエンザが、09年の新型インフルエンザなんです。
内田:そうなんですか!
岩田:つまり新型インフルは消滅したわけではなく、私たちが騒ぐことをやめたんです。
内田:なるほど。
岩田:感染症はそのように「人類と共生する」結末を迎えることが珍しくありません。新型コロナもこの先とことん広がれば、「感染すれば8割は軽い症状で済むけれど、2割程度は重症化し、高齢者を中心に1~2%は命を落とす」ことを人類が受け入れる可能性はあります。