3月31日、弟でCNNアンカーのクリス・クオモ(49)が感染し、自宅の地下室で自己隔離していることを発表。この時は冷静だったが、翌日の会見では「マイ・リトル・ブラザー」と言い、やや涙目になった。翌2日の会見でクリスをビデオで参加させ、ジョークを飛ばした。

「地下室でへばっている弟をやっつけたりは絶対にしないよ」

 これに対し、「兄弟のやりとりに釘付け。仕事が手につかない」「これこそ人間的なリーダー」とツイッターで称賛の嵐。「#クオモを大統領に」と2024年の大統領選出馬を期待するハッシュタグも、引用ツイート数が多いことを示す「トレンド入り」している。

 感染モデルに基づいて先手を打つクオモの手腕は、伝染病学者からも支持を得ている。当初は感染拡大を甘く見ていたのではないかという批判もあるが、3月上旬からの感染拡大が始まってからはブルドーザーのような指導力だ。

 クオモのように一国一城の主は強い。本来であれば今頃、今年の大統領選挙の民主党指名候補を争うジョー・バイデン前副大統領とバーニー・サンダース上院議員がニュースのヘッドラインを奪っているはずだった。しかし、2人とも、新型コロナ対策に何の影響力も示すことなく、クオモの人気が急上昇している状況だ。

 今後、ニューヨーク州で信じられない数の死亡者が出るのは避けられない。が、クオモがいなかったら、死亡者はもっと増えるだろう。危機のとき、人間が「強い指導力」を欲する理由だ。(文中一部敬称略)(ジャーナリスト・津山恵子【ニューヨーク】)

AERA 2020年4月13日号