環境教育の視点から牛乳パックを洗ってリサイクルする学校は多い。だがアレルギーや教員の負担を考え、別の方法を探る学校もある (c)朝日新聞社
環境教育の視点から牛乳パックを洗ってリサイクルする学校は多い。だがアレルギーや教員の負担を考え、別の方法を探る学校もある (c)朝日新聞社

 4月から東京都の多くの学校で、給食の牛乳パックのリサイクルが始まる。簡単に思えるが、実行するには様々な壁がある。現代社会が抱える問題が見えてきた。AERA 2020年4月6日号では、給食の牛乳パックリサイクルが与える様々な影響を取材した。

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 東京都豊島区の公立中学で教員として働く五十嵐夕介さん(36)は、4月からの給食時間のやりくりに頭を抱えている。これまでは12時40分から13時10分の間に、生徒たちの配膳、食事、片付けを見守りながら、自身は10分でかき込み、家庭学習ノートのチェックもしていた。これに加え4月からは、飲み終えた牛乳パックを係の生徒が洗い、干す作業も見なくてはならない。東京都の多くの小中学校で牛乳パックのリサイクルが一斉実施されることになったからだ。

「どう時間をやりくりすればいいのか……。昼休みを5分延ばす学校もあると聞きます。牛乳アレルギーの子のなかには飛沫に触れるだけで症状の出る子もいますから、専用の蛇口を設ける必要もあります」

 都内の学校給食の牛乳は、大半を東京学乳協議会に加盟するメーカーが供給している。これまでメーカー側が牛乳パックを回収しリサイクルしてきたが、2020年度からしないことに決めた。協議会はこう説明する。

「本来、牛乳パックは学校が処理すべきものなのです。廃棄物処理法で、事業活動に伴い生じた廃棄物は事業者が処理することとなっています」

 全国に目を向けると、10年ほど前から学校での対応が進み、牛乳パックをメーカーが回収する自治体はわずか、東京都は後れを取っていた。都の教育委員会は区市町村にリサイクルを要請、大半がそれに従う予定だがそうはいかないところもある。

 清瀬市は当初、生徒が家庭に持ち帰ってリサイクルする方針を打ち出していた。学校での洗浄は、アレルギーを持つ生徒にとってリスクが高いと判断したためだ。だが、保護者からは猛反発が起きた。反対署名を集めた、小学2年の子を持つ横山陸さん(36)はこう語る。

「2月中旬、保護者への事前の相談や説明なしに、いきなり家庭でのリサイクルのお知らせが配られました」

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