横山さんの指摘する問題点はいくつかある。まず、児童は牛乳パックをチャック付きポリ袋に入れ、家に持ち帰ることになっていたが、学童に通う子は6時間以上ランドセルに入れたままになってしまい、衛生面が心配だ。配られるポリ袋は1カ月に1袋。家庭の判断で枚数を増やすことは可能だが、リサイクルのために環境負荷の高いポリ袋を多用するのは、本末転倒だ。シングルや共働き家庭にとっては、毎日の洗浄・乾燥の負担も大きい。さらに家庭に持ち帰ることは廃棄物処理法に抵触する可能性もあった。

 こうした指摘を受け、清瀬市の教育委員会は方針を変え、牛乳パックを焼却処分することにした。清瀬市のほかには、調布市も20年度は焼却処分する。12年に乳製品アレルギーによる死亡事故が起きていることから、安全面を最優先した。

 紙パックからビンに切り替える自治体もある。多摩市の学校給食センターは言う。

「紙パックはストローが必要で、プラスチックゴミが発生します。給食の時間は短いためリサイクル作業を学校で行うのも厳しい。ビンであればメーカーに回収してもらえます」

 現在、学乳協議会の所属メーカーはビン牛乳を扱っていない。そもそも扱っているメーカーは少ないため、取引先の確保は容易ではなかったという。牛乳代が1本当たり6円高くなり給食費の値上げが必要だったが、保護者の理解は得られた。中には、国立市や小平市など、環境意識からすでにビン牛乳を取り入れていた自治体もある。

「04年、メーカーよりビンから紙パックへの変更を伝えられました。循環型社会を目指すうえでどうなのかと保護者にアンケートを取ったところ、8割以上が値上げしてでも再利用できるビンがよいと回答。そこで独自に業者を探しました」(国立市給食センター)

 環境問題、アレルギー対策、家庭や教員の負担やコスト──。200ミリリットルの牛乳には、現代社会が抱える様々な問題が詰まっている。(編集部・石田かおる)

AERA 2020年4月6日号