重松清「誰かの死で胸に開いた穴が、残り続けているなら埋めなくていい」 亡くなった父親と息子の関係を描く物語 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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重松清「誰かの死で胸に開いた穴が、残り続けているなら埋めなくていい」 亡くなった父親と息子の関係を描く物語

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重松清(しげまつ・きよし)/1963年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社勤務を経て執筆活動に入る。91年作家デビュー。2001年『ビタミンF』で直木賞を受賞。ほかに吉川英治文学賞など受賞多数(撮影/写真部・片山菜緒子)

重松清(しげまつ・きよし)/1963年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社勤務を経て執筆活動に入る。91年作家デビュー。2001年『ビタミンF』で直木賞を受賞。ほかに吉川英治文学賞など受賞多数(撮影/写真部・片山菜緒子)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。

 重松清さんの最新作、『ひこばえ 上・下』が刊行された。主人公は老人介護施設で働く、50代半ばの洋一郎。洋一郎がある日突然父親の死を知らされ、生前の父を追い求め「息子」として生き直す姿を描く。著者の重松さんは、同著にどのような想いを込めたのか?

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 父と子の物語を長年紡いできた重松清さん(57)。50代半ばになり、朝日新聞紙上で自分と同世代の洋一郎を主人公に、再び父と息子を描いた。今回の父は骨壺に入った姿で現れる。洋一郎には1970年に家を出ていった父・信也の記憶はあまり残っていない。

 現実の重松さんの父は2016年に亡くなった。思いがけないことに、亡くなった父の存在は生きていた時よりもずっと近くなったという。

「よく誰かの死で胸に穴が開いたというけれど、穴という形で残り続けているなら埋めなくてもいいと思うんです。いなくなった親父と自分自身がどう共存していくのか考えているうちに、死んだ父と息子の話を書いてみたいと思うようになりました。30代で『流星ワゴン』、40代で『とんび』と、その時の自分を投影した父子の関係を描いてきたけれど、いない父親との関係を書くとは、30代にはまったく想像していませんでしたね」

 洋一郎は信也が一人で暮らしていたアパートの大家、遺骨を預かっていた寺院の住職、信也と友達だったトラック運転手らと新たなつながりを作りながら信也の人生をたどり始める。

 信也がどんな人物だったかという謎が解けるわけではない。もともとさらりとした人間関係の中で生きてきた洋一郎は、まわりの人たちの熱さに辟易しながらも父の足跡を追っていくが、信也がずっと自分を気にかけ、「父」として確かに存在していたことを知る。洋一郎はあやふやだった「息子としての自分」も発見することができたのだ。新たな人間関係は、やがて長男の航太ら若い世代にも派生していく。倒れた木の幹に芽吹く「ひこばえ」をタイトルにした寓意はそこにある。


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