いま、各予備校が模索するのはAIと人間の講師とのベストミックスのあり方だ。城南予備校DUOではAIによる習得時間の短縮で浮いた時間を、チームによる「課題解決型学習」に充て、ビジネスコンテストに出るなどの取り組みを始めている。

「主流になりつつあるAO(アドミッションオフィス)・推薦型入試では、目的意識やプレゼン力が求められる。そこに対応できるコンテンツで勝負する」(千島さん)

 講師が担うのは、生徒を刺激し、議論を進展させていくファシリテーターの役割だ。

 駿台が注力するのは、コーチング力の強化。「勉強のやり方を教える塾」として注目を集めるプラスティーと組んで、効果的な声かけの仕方などを講師やスタッフ全体でさらに磨いている。

 こうした流れは、学校現場にも及び始めた。昨年、経済産業省が推進する「未来の教室」実証事業のモデル校となった武蔵野大学中学校は、学校としては初めて中1の数学でatama+を導入。個別指導教室で同教材の活用経験が豊富なZ会エデュースがサポートに入った。

 課題となったのは、やはりコーチの仕方だ。教師用のタブレットには「○◯さんは同じ問題を何度も解いています」「解説の動画を飛ばしているようです」といった通知が逐一出てくる。それを見ながら、どういうタイミングでどんな声かけをするのが効果的かを探った。

「教えるのではなくコーチに徹しようというマインドセットを、学校の先生方とサポートの私たちがしたことでうまくいった」

 Z会エデュースの高畠尚弘社長はそう話す。今後多くの学校でAI教材を導入する場合、課題になるポイントだ。デジタルネイティブ世代の生徒がAI教材に慣れるのはあっという間だろう。より大きなパラダイムシフトを求められていくのは、大人側であることは間違いない。(編集部・石臥薫子)

AERA 2020年3月30日号より抜粋